時事ブログ「グースの勿忘草」

滞るアジア外交／戦略性のなさが重いツケ残した2006/08/27 　「戦後最良」といわれる今の日米関係の一方で、中国や韓国とは「戦後最悪」の状態といってもよいのではないか。 　小泉首相は、両国が強く批判する靖国神社への参拝を繰り返してきた。「一つの問題だけで対話を拒むのはおかしい」と責任は相手にあるとするが、結果的に、自民党総裁選での公約へのこだわりが国益を損ねたといわれても仕方がない。 　冷え切った中韓両国との関係は、アジア外交に対する首相の姿勢がもたらした結果といえるだろう。 　この五年間を振り返ると、対米関係を重視するあまり、広い視野に立った戦略性がうかがえない「小泉外交」の限界が浮き彫りになってくる。 　(略） 　冷え切った中韓関係　とりわけ、困難に直面したのが、中国や韓国との外交だ。この五年、日中首脳会談は七回を数えたが、江沢民前主席の引退後は国際会議の場を借りての短時間会談ばかりだ。首脳同士の相互往来は、二〇〇二年から途絶えたままである。 　背景には、靖国参拝に加え、東シナ海のガス田開発などの摩擦が挙げられよう。亀裂が深まる政治問題とは別に、経済面を中心にした民間交流は緊密さが増しているといわれたが、悪影響は経済関係にも徐々に及びつつあるようだ。 　韓国との関係も似た状況だ。「韓流ブーム」もあり、当初は首脳同士も友好的だった。〇四年から毎年一回、首脳が相互訪問する「シャトル外交」が進められたが、翌年には、早々と中断してしまった。 　直接の引き金は、領有権争いが続く中、島根県議会が「竹島（韓国名・独島）の日」条例を制定したことだ。盧武鉉大統領は、これを境に対日姿勢を硬化させる。その直後、植民地時代の歴史問題に触れ「過去の真実を究明、謝罪、賠償し、和解しなければならない」と言い切った。 　今年に入って、竹島周辺の海域調査をめぐり日韓がにらみ合い、一触即発の危機に直面したのも、戦後初めてのことだ。 　中韓との関係が悪化したのは、近隣外交を疎（おろそ）かにした小泉首相の姿勢が大きな要因といえるだろう。経済や文化面で民間交流が急速に深まっている今、小泉外交は「流れに逆行した」というほかない。 　首相は「（中韓は）いずれ後悔する」などと強気の発言を繰り返すが、拉致問題の解決一つとっても、両国の協力なしには難しい。近隣国との関係の重要性にもっと目を向けるべきだ。 　地域の安定にも影響　首脳外交の空白は、東アジアの平和と安定にも影を落とす。自らの国益に影響することもあって、米国が日本のアジア外交に憂慮を示すのもうなずけることだ。 　対米外交を重視することは結構だが、その陰で、中韓に限らず、東南アジアやロシア、中東などとの関係が最近は疎遠になりつつあるのではないか。 　一方で、中国の胡錦濤主席は、急成長する経済力を武器に、近隣諸国や中東、アフリカ、中南米などとの多方面外交に精力的だ。日本に代わる「アジアの代表国家」を目指しているようでもある。 　中国や韓国との溝を放置してはならない。関係修復は次期政権にとって最優先の課題になるが、担うべき責任は重い。 （神戸新聞社説） http://www.kobe-np.co.jp/shasetsu/0000097359.shtml

■「社説」の意味
　ポイントポイントで、「ではないか？」とか「あるようだ」などの自信なさげな表現が見えます。地方紙とはいえ一応「社説」なのですから、具体的な論拠をあげて、神戸新聞としてはこう考える。という風に書かなければなりません。　　

　ゆとり教育の世代でもないのに、神戸新聞は「社説の意味がわからないレベル」まで落ちているのでしょうか。非常に残念な感じがします。


■断言できない理由
　神戸新聞の社説が自信なさげなのには理由があります。
　要するに「ウソ」を書いているから断言できないのです。
　例えば冒頭です。神戸新聞の社説ではこう書かれています。

＞中国や韓国とは「戦後最悪」の状態といってもよいのではないか。

　この文章では「戦後最悪」という部分がウソになります。
　日中間の関係は一般的に「政冷経熱」という風に表現されています。経済的な関係、貿易総額でみると、２００５年に日中間の貿易額は１８００億ドルを超えました。これは２０兆円を超える規模です。いまや中国は（アメリカを抜いて）最大の貿易相手国となっているのです。
　戦後最悪どころか、年々緊密になっているのが客観的な事実です。

　次に日韓の貿易関係についてみてみましょう。

対日貿易赤字史上最大になるもよう 　今年対日貿易赤字が史上最大を記録するものと懸念されている。 　１３日、産業資源部によると今年上半期、日本に対する輸出は１２９億７７００万ドル（約１兆５０９０億円）だったが、輸入は２５４億７４００万ドルで、赤字が１２４億９７００万ドルにのぼった。このような赤字幅は上半期貿易黒字（７０億３７００万ドル）の１．８倍の水準だ。 （韓国）中央日報　2006.08.13 17:39:53 http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=78824&servcode=300&sectcode=300

　解説するまでもなく日本側が儲けています。
　韓国が輸入しているのは（韓国では製造できない）工作機械や精密部品などになります。これは構造的なものですから、少なく見積もっても十年くらいは大きな変化はないでしょう。
　こういう客観的な事実を見ると、神戸新聞の異常性が際立ちます。
　例えばこの部分。

＞悪影響は経済関係にも徐々に及びつつあるようだ。

　悪影響の具体例が示されてないんですね。
　中国、韓国とも日本に依存しているという経済構造を考えれば、大きな悪影響などありえないのですが神戸新聞にはそれがわからないのでしょうか。
　少なくとも根拠のない想像で「社説」を書いてはいけません。
　社説は日記帳ではないのです。
　個人のブログならともかく、地方紙とはいえマスメディアの端くれなのですからもう少し「公正な分析」が求められるでしょう。マスメディアというのは個人的な主義主張を発表する場ではないのですから。


■小泉外交の勝利
　上のように、冷静にプラスマイナスを分析すると、日中あるいは日韓の関係はそんなに悪くありません。マイナス点は「首脳会談がない」くらいのものでしょう。その点を差し引いても、プラス面のほうが多いでしょう。
　
　「首脳会談がない」ことの評価は難しいのですが、現実として「悪影響」はありません。首脳会談で援助を無心されるならやらないほうがよいし、無謀な要求をつきつけられるなら、やはり首脳会談をしないほうがよい。
　韓国は竹島の領有権を放棄すれば、首脳会談に応じるようなことを言っていますが「たかが首脳会談」にそんな価値はありません。
　日本の国力を考えれば、「会って貰う立場」ではありませんし、首脳会談がない状況は、中国も韓国も同様なのです。
　首脳会談がないことで、「日本だけが困っている」かのようなプロパガンダが連日行われていますが、マスメディアはもう少し「公正な報道」「公正な分析」をする義務があるでしょう。


■中韓との関係悪化は誰の責任？
　神戸新聞は、中韓との関係悪化の責任が全て日本側にあるかのように書いています。しかしながら国際法の視点で見ると、日本側に非は全くありません。
（１）靖国参拝は国際法上問題なし。
（２）東シナ海のガス田開発を強行しているは中国。
（３）竹島はサンフランシスコ講和条約によって日本の領土と認められている。不法占拠しているのは韓国。

　中国や韓国の「無法行為」によって摩擦が生まれたことまで「小泉政権」の責任にするのはかなり無理があると思いますが、神戸新聞は正気なんでしょうか。


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