通常国会中に意見集約 党基本政策で前原代表
民主党の前原誠司代表は22日夕、党本部で記者会見し、党内で意見対立がある外交、安全保障などの基本政策について「来年の通常国会中に一致を図る。合宿をしてでも意見集約し、二度とバラバラだと言われないような状況にしたい」と述べ、夏前までには取りまとめる決意を示した。
特に集団的自衛権行使の容認論を含む自らの包括的な外交、安保ビジョンに関して「あらかた準備ができているので、しかるべき時期に出したい」として、年明けの早い段階に提示して党内議論に入る考えを強調。
ただ、憲法改正問題については「本格的な中身の議論を全国の対話集会で行いたいので、通常国会の間にまとめ切ることにはこだわっていない」と述べた。
共同FLASH24 2005年(平成17年)12月22日
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合宿はいいですね(笑
具体的な方法はともかく「集団的自衛権」について徹底的に話し会うのはよいことだと思います。仮に「集団的自衛権の行使を認めない」というトンデモな方が出てきたら、社民党にでも引き取っていただくということでお願いしたいと思います。
集団的自衛権という用語が生まれた歴史的背景などは、
「集団的自衛権」10分クッキング」のエントリーで説明していますが、少し補足してみます。まず集団的自衛権の定義です。
国際法講義[新版] 波多野、小川編 有菱閣大学双書
集団的自衛権とは、いわば、安全保障理事会の許可なしでできる他国防衛の権利である。これが、もっぱら自国防衛をさす伝統的な(個別的)自衛権とは沿革を異にするとしても、実際には、他国防衛は、国際連合が成立する以前から、自衛権の名のもとに、しばしば行われてきた。
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■集団的安全保障について
現在の「安全保障」というのは、「侵略をする悪い国が出てきたら、みんなで協力して制裁を加えよう」という思想なんです。その制裁を加えるにあたって、国連が主導する場合は「世界的安全保障」となるわけです。
国連主導による世界的安全保障の最大の欠点は
、「拒否権」を持つ国が侵略を行った場合に、制裁が発動できないという点にあります。つまり、拒否権をもつ大国(常任理事国)が「侵略」を行った場合に、国連主導の安全保障は機能しないという
重大な欠陥があるわけです。
例えば「中華人民共和国」がどっかの国を侵略したとしても、中国は国連の常任理事国であり「拒否権」がありますから「制裁決議」は安全保障理事会を通過できません。国連軍として侵略国に対して武力行使を行うことはできないわけです。
そこで「地域的安全保障」、つまり「集団的自衛権の行使による防衛」という方向に行かざる得ないんですね。これは「何かあったら、ご近所同士で相互に防衛しましょう」という制度です。ご近所同士で防衛している間に、国連で侵略国に対する制裁決議が得られれば、援軍として国連軍がやってくるわけですからいわば二重の安全対策ということになります。
仮に集団的自衛権の行使を「認めない」となると、「自分の国は最後まで自分で守る」という固い決意が必要なんです。なぜならば、「国連軍はこない」かもしれないのですから。いわゆるハト派とか左派とか、平和主義的な方々は、「必ず国連軍は来る!」という前提で国防を考えているようですが、現実として
国連軍が来るという保障はどこにもないことを知るべきと言えます。
■「集団的自衛権」は行使できないか?
我が国は、アメリカ合衆国と同盟関係にあります。日米安全保障条約により、日本が攻撃を受けたらアメリカ合衆国は集団的自衛権に基づいて(一応)日本国を支援することになります。これは日米共同で軍事行動を行うことが前提となりますので、
日本国は「集団的自衛権の行使」を容認していることになります。
集団的自衛権とは「他国を防衛する権利」となるわけですが、ここでいう「他国」というのは「他国の権益」を意味するので、必ずしも領土、領空、領海などに限られません。
例えば、自衛隊の艦船が公海上で攻撃を受けても「日本国に対する攻撃」とみなされます。同じように
アメリカ軍の艦艇が日本付近で攻撃を受けても、それは「アメリカ合衆国に対する攻撃」とみなされるわけです。
つまり、有事にあたって
自衛隊がアメリカ軍と共に軍事行動を行うということは、アメリカ軍に対する攻撃をも「日本国に対する攻撃」とみなして反撃するということですから
「国際法上は集団的自衛権の行使」となるわけです。
歴史的にみても「同盟関係による防衛=集団的自衛権」という解釈になりますから、日米安保条約がある我が国において「集団的自衛権を行使しない」という選択はそもそもあり得ないのです。
■迷走の原因
ではなぜ我が国では
「憲法上集団的自衛権が行使できない」という伝説が一般化しているのかというと、そういう政府見解が存在するからです。
(昭和56年5月29日 内閣法制局答弁書)
国際法上、国家は、集団的自衛権、すなわち、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもつて阻止する権利を有しているものとされている。
我が国が、国際法上、このような集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上、当然であるが、憲法第九条の下において許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであつて、憲法上許されないと考えている。
なお、我が国は、自衛権の行使に当たつては我が国を防衛するため必要最小限度の実力を行使することを旨としているのであるから、集団的自衛権の行使が憲法上許されないことによつて不利益が生じるというようなものではない。
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こういった「ネジれ解釈」が生まれたのには実は理由があります。詳細は
「国際派日本人養成講座」参照していただくとして、簡単に説明すると野党が強かった時代の国会対策だったわけです。
上記答弁を国際法にそって正確に記述しなおせば、
『国際法上、我が国が集団的自衛権を保持していることは当然であり、国家を防衛する最小限の範囲で集団的自衛権の行使が認められる』となります。
憲法で制限されているのは「集団的自衛権が行使できる範囲」なんですね。
日米の軍事同盟関係が存在する以上、集団的自衛権の行使ができないという解釈は成立し得ないのですから、憲法で制限があるとすれば、集団的自衛権が行使できる
「地理的な範囲」ということになると思います。
要するに、日本国周辺における武力紛争については日米同盟による集団的自衛権で対処するが、アメリカ本土の防衛については、国連決議がなければ憲法上は自衛隊を派遣できない、というような解釈は成立する余地があると思います。
■集団的自衛権を否定すれば平和になるか?
護憲派の勘違いQ&A
Q アメリカが侵略戦争起こしたら、集団的自衛権で日本も侵略に協力するの?
A 現在の国際法では「侵略戦争は禁止」されていますから、「アメリカの侵略戦争」に日本国が加担することはあり得ません。現在では国連決議によって「侵略戦争」の定義はされているので、自衛の名目で侵略戦争を行うというのもほぼ不可能となっています。
Q 集団的自衛権を認めるとアメリカの戦争に巻き込まれるんじゃないの?
A 日本国が「集団的自衛権を否定」しても、日米同盟が現実として存在している以上、アメリカが戦争に巻き込まれれば、同盟国である日本も自動的に戦争に巻き込まれることになります。日本国の憲法解釈とは無関係に、国際法上は同盟国の間の軍事的協力は認められていますから、同盟国は軍事的に一体とみなされるからです。
Q アメリカが戦争にまきこまれても日本は「中立国」になればいいんじゃない?
A 日米同盟があるので中立国となるのは不可能です。日本には米軍の基地が存在しますから、それだけでアメリカ軍に対する軍事的援助とみなされます。日本が中立国となる為には、日米安保条約を破棄して、米軍基地を撤去することが最低限必要となります。
Q 集団的自衛権を認めると徴兵制が復活するんじゃないの?
A 徴兵制と集団的自衛権の間に直接的な関連はありません。世界中の国家で集団的自衛権は認められていますが、徴兵制を敷くかどうかはその国の国情によります。
現在は在日米軍と自衛隊とで国防上の役割を分担していますので、むしろ
集団的自衛権を否定した場合のほうが「徴兵制が復活」する可能性が高くなります。これは単純に国防上の負担が増えるという理由からです。
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