■男系継承の理論的考察
なぜ天皇は「男系(父親が天皇の血筋)」でなければならないのか、という問題についてですが、だいたい以下の二つの理論で説明されることが多いようです。
(1)男系での継承が二千年以上に渡る歴史的伝統だから。
(2)Y染色体は男系にしか受け継がれないから。
以下、保守系超党派で構成される「日本会議」の勉強会から。
皇室典範改正勉強会 「Y染色体」の重要性指摘 男子皇族、代々受け継ぐ 2005年11月30日 (水) 02:42
超党派の保守系議員でつくる日本会議国会議員懇談会(平沼赳夫会長)は二十九日、国会内で皇室典範改正問題に関する第二回勉強会を開いた。この中で、父方の系統に天皇を持つ「男系」による皇位継承の重要性について、遺伝学の立場から説明する際に用いられる「Y染色体」理論をどう考えるべきかが取り上げられた。「男系でなければ血を継承できない」(八木秀次・高崎経済大助教授)一つの根拠とされる「Y染色体」とは何なのか。専門家の話を交えて検証した。
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「男系の意味をどう理解するか。Y染色体で説明すれば国民の理解は進むのではないか」(自民党の石田真敏衆院議員)
「女性の立場からすると、Y染色体論はむしろ分かりにくい」(同党の稲田朋美衆院議員)
この日の勉強会では「Y染色体」をめぐって意見が割れ、講師の大原康男・国学院大教授が「それよりも男系で二千年間継続してきた重み、事実を考えなければならない」と引き取った。「Y染色体」については、「皇室が成し遂げているのは千数百年にもわたり、ほとんど同じ『Y』を受け継いだということ。われわれが直面しているのは、千数百年もの間純粋に受け継がれてきた『Y』を、いま絶えさせていいのかという問題だ」(動物行動学研究家の竹内久美子氏)など、重要性を指摘する向きもある。ただ、一般にはまだなじみが薄い。
産経新聞WEBより
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繰り返しになりますが男系維持の理論を整理すると、(1)過去の天皇はすべて男系でありY染色体を受け継いでいる。(2)Y染色体は男系にしか受け継がれないから、天皇は男系(父親が天皇の血筋)でなければならない、という主張になると思います。
この理論では「Y染色体」が天皇の要件である根拠を、「歴史と伝統」に求めているんですね。
つまり、Y染色体が受け継がれてきたというのはあくまでも「結果」であって、
正当性の根拠にはならないのです。この点を勘案すると、(筆者の個人的は感想になりますが)Y染色体論は国民受けしないと思います。あくまでも男系継承の歴史的正当性を補強する二次的な理論として、あまり全面に押し出さないほうがむしろ効果的ではないかと思います。
■効果的な世論形成の為「争点の整理」
女系容認論の根幹は、(A)男系継承では皇室制度(天皇制)を維持できない、(B)女系継承がダメな理由が曖昧である。この二つになります。
(A)がウソであることは広く知られています。現在の継承資格者で一番若い秋篠宮殿下が現在四十歳です。平均寿命を考えれば、あと四十年くらいは男系の男子でもつことになります。また、男系の女子(例えば愛子さま)まで広げればさらに三十年は大丈夫です。つまり七十年から八十年間は男系継承でいけることはまず間違いないんです。
さらに、旧皇族の方が皇室に復帰すれば、皇位継承が問題化する四十年後までに男系男子が誕生する可能性は高くなりますから、百年くらいはまず大丈夫だろうと予想されます。つまり、男系継承で皇室制度(天皇制)維持できないというのは
「真っ赤なウソ」と言ってよい。
女系承継を認める為に、皇室に縁もゆかりもない、歴史も伝統もない平民一族を皇族にするよりは、旧宮家の皇室復帰のほうが遥かに筋が通っています。ということで「維持できない説」は完全に破綻しているので、なぜ「男系継承でなければダメなのか」について考察してみたいと思います。
■王朝交代がなかった証明説
歴史的にみると天皇は政治権力を行使していたので、天皇の一族で権力を継承する必要がありました。女系に皇位を継承させるということは、「王朝の交代」を認めるということですから、「男系の継承者がいる限り」は女系に継承させる意味はなかったわけです。
逆に言うと、男系に属する人間がまったくいなければ、正当な継承者不在ということで皇位が女系に継承され「王朝交代」が実現されたのかもしれません。しかしそういうことは起きなかったわけです。「二千数百年間、王朝交代がなかった」ということが、日本国の歴史の連続性を示す大きな特徴であり、これは現在も継続中、記録更新中なんです。
この「王朝交代がなかったという事実」は、「男系継承によってしか証明することはできない」。だから男系でなければ「天皇」ではない。なぜ記録更新中の現在の王朝を終わらせる必要があるのか? という説明ならば、かなり国民受けすると思います。
■皇室制度維持の為の要件説
女系皇族と婚姻関係を結ぶことで誰でも皇族になれる制度では、野心をもつ宗教団体や政治団体、あるいは時の権力者が、財力や政治力などを駆使して女系皇族との婚姻関係を求めることが予想されます(結婚には皇室会議の承認が必要だが、時の権力者が皇室会議を乗っ取ることも可能。また、皇族の希望を却下することもかなり難しいと思われる)。
つまり、皇室の中立性や、象徴天皇制の中立性を担保する為には、外部から皇室に入り込めない制度が必要である。という説明でも国民は納得すると思います。
女系容認論に負ける気がしない方は

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