娘に言わせると私は「キリギリスである!」らしい。昨年の誕生日に、娘はニコニコしながらプレゼントを差し出しました。お店でキリギリスが足を組み、のんびりと寝ころぶ姿を見つけると、思わず「お母さん!」と叫んだらしい。
(ちなみにふた付きの小箱の下の方には、せっせと働いているアリ達が沢山います。)
「アリとキリギリス」と言えば皆さんは何を連想しますか?努力をしないで遊び暮らし、最後には野垂れ死にしてしまう哀れなお話!いーえ私はそうは思いません。いつ来るか分からない厳しい冬のために、今出来る楽しみをしないでこつこつ努力する!そんな事はもったいなーい!と思ってしまいます。
そんなキリギリス的生き方を信条としている私からお勧めの一冊は、森茉莉著「貧乏サヴァラン」です。
いつ終わるとも知れないデフレスパイラル、そんな中、いつも節約に頑張っている自分に、少しだけ贅沢を味わわせてくれるようなものが売れ始めているというニュースを聞きました。
茉莉さんは、「私が若い人達に言いたいことは、楽しむ人になってもらいたいことだ。」と言っています。また彼女は
「私は貧乏でもブリア・サヴァランであるし、精神は貴族なのである。」ときっぱりと宣言しています。そして「貧乏な私がタオルや一本の匙に贅沢をする、空き壜の薄青にボッチチェリの海を見て恍惚とする。これが贅沢貧乏である。」と考えます。これこそ創造にあふれた、贅沢な精神を持った生き方だなと共感してしまいます。
「生きている歓びや空気の香い、歓びの味、それがわからなくてなんの享楽だ。なにが生きていることだ。」と言い切ります。
閉塞感に押しつぶされそうな今の若い人達にも、また人生の半ばを過ぎ、自分の生き方を問い直したい私の世代の方々にもぜひお勧めです。
三島由起夫、室生犀星などの文豪たちとの交流、また白石かずこ、富岡多恵子、吉行理恵たちとの楽しいエピソードも一杯です。

『貧乏サヴァラン』
ちくま文庫
著 者 森茉莉 早川暢子

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