今年のアカデミー賞でも話題となりましたし、先日福島でも公開された、
「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」という映画を見ました。
石油屋を自認する男が、唯一の肉親である息子と共に、有望な油田採掘
地を求めて旅から旅を続けています。その男に有力な情報がもたらされ、
そこからのし上がっていくのです。
不屈の意志と才覚で成り上がる主人公は、見ようによっては成功者でし
ょう。採掘中の事故で、作業員の何人かをなくし、息子も巻き込まれてし
まいますが、あくまでも前に突き進んでいきます。
でも彼が理想的な人物にも見えず、幸せにも見えないのは、強すぎるエ
ゴイズムによって、そんな甘さを寄せつけないのだと思います。
ふと、地中から吹きだす真っ黒な石油は、大地が流す血でもあり、主人
公ダニエルの業の強さなのかもしれないと感じました。
いま、石油は投機の対象となり、不当ともいえる高騰を続けています。
発展途上国の中には、食料品の高騰に苦しんでいる所も出ています。
これも石油を廻る「エゴイズム」なのだと思うと、暗澹たる気持ちになるのです。
石油!
発行所=平凡社
著 者 アプトン・ビール・シンクレア
価格 2,520円(税込)
第80回アカデミー賞受賞映画「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」原作。
カリフォルニア油田を舞台にした“石油王子”の大河ロマン小説。
80年ぶりの復刊!

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