2015/3/8

映画「娚(おとこ)の一生」  映画

本年度の邦画第1位の予感がする傑作

今年に入って毎日のようにDVDを観ているのだが、映画館にも通うようにしている。先月は原作小説のファンなので、「ジョーカーゲーム」を観て、「深夜食堂」を観て、「繕い裁つ人」「娚(おとこ)の一生」を観た。

その中でも中谷美紀主演の「繕い裁つ人」と、「娚の一生」は本当に素晴らしかった。今回は「娚の一生」を紹介したい。

一流IT企業に勤務しながら、忙しい毎日と不倫に疲れた果てた堂薗つぐみ(榮倉奈々)は、祖母の葬儀のために田舎に帰り、空き家になったその家に身を寄せる。親類たちが集まって祖母の葬式が行われた翌日、家の離れに住んでいるという海江田醇(豊川悦司)という52歳の大学教授に出会う。孫の自分に許可なく、と憤慨するつぐみだが、関西なまりで話し、妙に図々しい海江田に徐々に惹かれていく。

海江田は、つぐみの祖母(染色家で、大学で講師として染色について講義していた)の教え子であり、年下の彼氏でもあった、死んだ祖母の恋人であったことに抵抗を感じ、事あるごとに反発するつぐみだが、海江田の実直な言葉のひとつひとつに、不倫による男性への不信感は氷解してゆく。

当初、榮倉奈々はどうだかな、と思っていたのだが、このキャスティングは正解だった。すぐに海江田に惹かれていく感じでもなく、惹かれながらも“祖母のかつての恋人”という部分に、思い悩むところが、榮倉奈々だから良かった部分があるのだ。また、この映画は豊川悦司なくして成り立たなかったと言える。図々しい部分と実直な部分、そして不器用な部分を、ごく自然に出せる俳優なんて豊川悦司以外にはあり得ない。

豊川悦司扮する海江田の、映画におけるセリフは本当に心に残る。

「戸惑いました。 でも、名も知らんこの人の近くにおりたいと、ぼくの何かが決めてしまった。 それが先生の孫娘やったのは・・・・・・でも“恋”なので仕方ありませんでした」

「練習やと思て、ぼく相手に恋愛してみなさい」

「君は自分を大事にしなさすぎや  腹立つ」


ぜひとも、ご覧いただきたい作品だ。「繕い裁つ人」と共に日本映画の収穫ではないか。

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2012/1/9

ワイルド7  映画

望月三樹也の名作漫画の実写化は果たして成功か

40代以上の男性なら、望月三樹也という名前に一種の郷愁を覚えるだろう。そして「ワイルド7」という名前にも。漫画「ワイルド7」は、1969年〜1979年に週刊少年キングに連載された。その後、何度か掲載雑誌を変えながら、スピンオフ作品も含めて連載されてきた。望月三樹也と言えば「俺の新撰組」か本作。そんな名作漫画が実写として甦った。「ワイルド7」だ。

「ワイルド7」とは、警察の元キャリア官僚で、将来の警視総監とも期待された男・草波勝(本作の続編「優しい鷲」では検事総長になっていた)によって組織されたチームだ。殺人犯、爆破犯人、詐欺師、ヤクザなど、死刑に値する悪党7人に「ワイルド7」と名付け、凶悪犯向けの非合法組織としたものだ。漫画では飛葉大陸をリーダーに、オヤブン、両国、世界、チャーシュー、ヘボピー、八百といった名前の悪党たちに警視〜警視長といった警察階級を与え、凶悪犯を逮捕ではなくその場で処刑することを認めていた。今も「ワイルド7」のファンは多く、おれもその一人だった。

昨今、漫画の実写化ブームだが、どれほどの作品が成功しただろう。漫画と映画(またはドラマ)の両方が成功したのは「三丁目の夕日」と「モテキ」ぐらいではないか。「ワイルド7」の実写化の話を聞き、おれは期待したが主演が瑛太と聞いて脱力した。それじゃあ「マイルド7」だろう。飛葉のイメージとしては織田裕二や反町隆史の方がまだ近いようにも思う。そしてメンバーの名前も漫画通りではなく、漫画そのままなのは飛葉、世界、オヤブン、ヘボピーだけ。どう考えても期待できない。

実は「ワイルド7」は遠い昔に一度ドラマとして実写化されている。草波を川津祐介、飛葉を小野進也が演じた。この作品も漫画を超えていなかった。

そして本日、映画「ワイルド7」を観て来た。うーん、どうなんだろう、思っていたよりも悪くはない。ただやはり瑛太では今ひとつだった。笑わないことで飛葉に成り切ったんだと思うけれど、原作の飛葉は笑うし、ダメな部分も多い。しかしそれをカバーするのが抜群の射撃能力とバイクの操縦術だ。他のメンバーもそれほど悪くないのだが、やはり2時間では全員の性格描写はできておらず、唯一、椎名桔平の演じた“世界”までだった。

やはり期待はずれの「ワイルド7」だったが、中井貴一演じるワイルド7隊長・草波は良かった。原作そのものと言っても良かった。これだけが、映画版「ワイルド7」の救いだったと思う。
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上は望月三樹也原作「ワイルド7」の飛葉、下は実写版「ワイルド7」の飛葉(瑛太)。


※画像と写真は、アニメワン様とサンスポドッコム様のサイトより拝借いたしました。
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2011/1/2

ばかもの  映画

年上の女に憧れた頃を思い出す作品。

男は、一度は年上の女に憧れる時があるものだ。おれもそうだった。それまでは、付き合うなら同じ年か年下の女と考えていた。しかし、あまりに魅力的な年上の女に出会うと、ああ、もうこの人しかいないと考えてしまう。自分に頼る年下の女も悪くないのだけれど、自分自身が頼りたくなる年上の女は素敵だ。年上の女と付き合ってしまう理由はいくつかある。しっかりしているのに、年下の自分だけに見せる、頼りない部分に惹かれてしまうのではないか。その頼りない部分を、おれが補填してやらねばと感じてしまう。おれも40代後半になったので、さすがに、もうそんなことはないけれど、一つばかり年上のしっかりした女に出会うと、未だにクラクラする。「ばかもの」は、ある意味でそんな映画だ。

19歳の大学生ヒデは、偶然に知り合った27歳の居酒屋の娘・額子(がくこ、と読む。額田王が由来らしい)と初めてセックスをする。自由気ままな額子に翻弄されながもら、ヒデは夢中だった。しかし「あたし結婚するんだ」という言葉を残して、額子はヒデの元を去っていく。ここからのヒデの転落ぶりが凄い。大学時代のガールフレンドや、友人の結婚式で知り合った女教師との付き合いもありながら、酒に溺れていく。元々下戸だったヒデだが、額子の影響で飲み始め、額子が去った後も酒から離れられなくなる。

遂にはアルコール依存症になったヒデは、恋人の女教師と破綻し、酒に酔って姉の結婚式をメチャクチャにしてしまう。そしてついに療養所に入ることになるのだ。なんとかアル中を克服したヒデは、額子の母親(懐かしい古手川祐子!)から、事故で身障者になった額子のことを聞く。そして額子に会いに行く。

待ち合わせ場所に立っていたのは、白髪で、左腕を失った額子だった。結婚した後、亭主の不注意による交通事故で左腕を失っていたのだ。亭主と別れた額子は山奥の家でひとりで暮らしていた。元アル中と身障者。どこかぎこちない時間が過ぎていく。更生したヒデはバイバスの中華料理屋で働き、そこの主人から気に入られ、娘からも惚れられていた。しかし週に1回のペースで額子のもとに通うヒデ。額子の母親から、自分が去った後にアル中になったことを知り、その自責から額子の髪が白くなったとヒデは聞く。あんなに自由気ままで奔放だった額子が、かつての恋人だったヒデを頼って泣く。ヒデは残念がる中華料理屋の主人と娘に別れを告げ、額子と暮らし始める。ヒデの目にはもう迷いはなかった。

芥川賞作家・絲山秋子の原作小説を、平成版「ガメラ」、「デスノート」の金子修介監督が映画化。額子に内田有紀、ヒデに成宮寛貴。キャラのかぶる遠藤久美子の登場や、吉岡秀隆との離婚などにより、影が薄くなって芸能界でも忘れられていた内田有紀。だが本作では素晴らしい演技を見せ、ようやく復活したと感じた。また成宮寛貴が秀逸。素直なごく普通の青年がアル中になっていく様は凄まじく、少し驚く。

先日紹介した「森崎書店の日々」を含め、今回の「ばかもの」と、日本映画はまだまだ捨てたものではない。制作費に金をつぎ込むだけが映画ではないのだ。

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