ツール・ド・フランス観戦記
by 冨松大輝
7月の中旬、突如ツール・ド・フランスの最終ステージを観戦できることになり、準備も慌ただしく25日に出発しました。福岡空港から成田で乗り換えパリまで直行。3度の機内食に苦しみながら11時間半のフライトで無事にパリに到着しました。

【くまもん仕様の2度目の機内食。メインメニューは熊本名物太平燕】
空港ではいきなり黒塗りのベンツがお出迎え。ビシっと黒のスーツに身を包んだ黒人のドライバーさんがドアを開けて笑顔で迎えてくれましたが、思い切り普段着の私たちは少しあたふたしながら車に乗り込むことになりました。
夜7時を過ぎての到着だったため、市内の渋滞はなくホテルまでスムーズに動き30分程で到着しました。パリは夜9時くらいまで明るく、ホテルに着くとエッフェル塔も凱旋門も見える部屋に興奮しましたが、時差の関係もありこの日はすぐに寝てしまいました。

【ホテルの窓から】
翌日はモン・サン=ミシェル観光です。
パリから片道約4時間の道のりを、豪華バスでひたすらノルマンディ地方をめざし北上します。乗客は定員の半分ほどだっため、のんびりゆったりのドライブとりました。あと20kmほどで到着、という頃には遥か彼方にモン・サン=ミシェルの姿が見え始めます。到着後はまず名物のオムレツを食べ、いよいよモン・サン・=ミシェルへと入っていきました。

【玉子は3倍の大きさに膨らむまで泡立てて焼かれるため、メレンゲ状でふわふわ】
対岸から見えるモン・サン=ミシェルは想像していた以上に威厳があり、近づきがたい荘厳な雰囲気が漂っていました。重々しい石造りの建物はなかなか日常生活ではお目にかかることができない圧巻なものでした。世界のカトリック教徒たちが巡礼でここを目指すのもわかるような気がします。
一歩足を踏み入れると、観光客で賑わっていて外から見るイメージとは少し違いました。メインストリートはグラン・リュと言って大通りを意味する名前がつけられていますが実際は名前に反し細い路地ばかりで、所狭しとレストランやホテル、お土産店が軒を連ねています。さすが世界遺産。ほとんどはヨーロッパ各地からの観光客のようでしたが、時々日本人やアジア人の姿も見かけました。

【グラン・リュ】
石造りの階段を上り進めると、礼拝堂や修道院などが徐々に姿を現し巡礼地であることをあらためて認識することができます。大聖堂は静かな空気が流れ、観光客が多数いたにも関わらず、時間が止まっているかのような錯覚に陥りました。

【大聖堂】

【静かな空間も至る場所に】
モン・サン=ミシェルを出て、対岸までは無料のシャトルバスか有料の馬車で戻ることになっていましたが、私たちの訪問3日前に遊歩道が完成したばかりとのことで、約40分の道のりを歩いてみることにしました。炎天下の道のりでしたが日本のような湿気はなく爽やかな風に思ったよりも気持ちよく歩くことができました。後ろを振り返りながらゆっくりとモン・サン=ミシェルを堪能できたため、遊歩道を選んでよかったと思いました。

【完成したばかりの遊歩道。炎天下のためバスを利用する人が圧倒的に多い】
そして翌日、27日は待ちに待ったスール・ド・フランス最終ステージの観戦!朝は少し遅めにホテルを出て、ゆっくりと会場へと向かいました。VIP席のチケットを現地コーディネーターさんにゲットしてもらい気分も高まります。シャンゼリゼは、前日までとはまったく違ったレース会場と化していて、そのエリアに入るにもチケットチェックが各所で行われていました。

【VIP席のチケット】

【開くとプログラムや座席図が】

【いたるところに警察官が】
選手は夕方6時頃にしか到着しないということもあり、お昼過ぎの座席はまだ人がまばらでした。日中は女子のレースやジュニアのレースが行われ、夕方近くになると各社スポンサーの趣向を凝らした宣伝カーのパレードが始まります。

【おなじみLCLのライオン】

【ドリンクメーカーのパレード】
この頃には人も随分と増え、メインレースへの期待感も高まっていきました。そしてシャンゼリゼに選手達が近づいてくると観客たちは総立ちに!先導車が見えると歓声もひときわ大きくなり、隣の人との会話も難しいほどになりました。そしてそれに続く選手を見ようと身を乗り出していると、上空にフランス空軍の戦闘機がトリコロールカラーの煙を出しながら轟音と共にもの凄い迫力で通過していきます。毎年テレビで見ていた光景を現地で見ていることが信じられない気持ちでした。ついに見えた選手たちの列は、これまで約3500kmを走り抜いてきたとは思えないスピードであっという間に私たちの前を駆け抜けていきました。
何周回もしているうち目も慣れてきて段々と選手がわかるようになりました。新城選手も前方のいい位置につけているのが見え一生懸命応援しました。このステージはキッテルが優勝。カヴェンディッシュとのスプリント競争を期待していましたが、その夢はツール初日に消えていたので予想通りの結果でした。

【インタビューされながら表彰式会場のコンコルド広場へ向かうキッテル】
レース後に石畳を歩いてみると、日本で見たことのある石畳よりも凸凹が激しく、この道をあんなスピードで走っていたと思うとあらためてトッププロの選手の神業的な技術に感服しました。
帰り道、コンコルド広場には各チームのバスが並び、選手たちも普通に自転車に乗ってふらふら戻ってきています。たくさんのファンがいたものの大騒ぎして騒動になるようなことはなく、みんな一定の距離を保って選手たちを眺めたり時にはサインや写真撮影を申し出ていました。

【フランクシュレク選手】

【新城選手のバイク。生で見れた〜感動!】
ホテルに戻ってさらにびっくり!!多くのチームが同じホテルに宿泊するようでロビーにいると多くの選手が戻ってきました。目の前を通る選手達。トレックやキャノンデール、ジャイアントシマノ、アスタナ、スカイ等々、そうそうたるチームの選手達がロビーを通ってぞろぞろとエレベーターホールへと向かっていきます。ほとんどの選手たちは背もそれほど大きくなく、細い身体でどこにスタミナが隠れているのだろうと思えましたが、やはりキッテルだけはとても大きかったです・・・。
翌朝、朝食会場へと向かうエレベーターの中では新人賞かつ総合3位となったティボー・ピノ選手と一緒になりました(朝食も選手達一緒でした)。
昨日からの出来事が現実離れしていてあまりにすごく夢のようで、逆にテレビを見ているかのように客観的に、冷静にいれたような気がしました。
最終日、出発までに時間があったため3月の修学旅行の時に行き損ねた、シャンゼリゼ大通りにあるサッカーショップに寄ったり、凱旋門の上に上ってみたりしました。そうこうしながらバタバタと3泊5日の弾丸ツアーは終了していきました・・・。
滞在中、天候に恵まれ5日間ずっと晴れていましたが、お腹の調子を崩し、現地のおいしい料理がほとんど食べられなかったのだけが心残りでとても残念でした。
今回、ツール・ド・フランスという最高峰のレースを目の当たりにして、自転車レースの迫力、ヨーロッパでの人気度、そして見ているものを魅了する楽しさや凄さを実感することができました。その凄さがわかった分、「いつかツール・ド・フランスに出てみたい」と軽々しく口にしたり思うことすら遠のいてしまった気がしますが、今は自分ができることをコツコツと積み上げ、何かしらの結果が残せるくらいまでにはなりたいと強く思っています。