2006年8月8日付けの記事から、ある詩を作者の許可を得て再掲します。
作者は当「すいへいせん」メンバーの一人であるtenさん。
前書きで登場する「知人」とは富田倫生さんの事を指しています。富田さんは青空文庫呼びかけ人の一人です。
7年前の8月、当時長期入院をしていた富田さんに、とtenさんが書いた詩が「今、病の床にいる人へ」です。
富田倫生さんは、昨日16日の昼、61歳で亡くなられました。
7年後、同じ8月の陽光の中を旅立っていった富田さんに
9回裏、ツーアウトでも諦めなかった富田さんに
もう一度捧げます。
「今、病の床にいる人へ」
先日私の知人が入院をした。その知人はこのサイトが好きでたまに読んでくれていたようである。
そんな彼へ・・・
あなたは少年
その眸は
今 病室の窓から、夏の高い空を見つめているのだろう
そこにある憧憬をつかもうとしてあなたは手を伸ばす
あなたは青年
その論理は
今 病室の窓から 夏の雲の行方を語ろうとしているのだろう
流れの果てにある希望をつかみに行こうとあなたは足を動かす
野球少年が九回ウラツーアウトでもあきらめないように
今は立ち上がれないが、あなたの身体には魂の重さがある
粘り強い論理がある
どうしてこうも病のあなたが輝いて思えるのだろう
その輝きをベッドに沈めてゆっくりと休んで欲しい
これが、何もしてあげられない無力な
私たちがおくるせめてものことば
夏の太陽がそのことばの真上にある (by ten)

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