プロレタリア文学者本庄陸男は、102年前の今日生まれた。四作品が現在公開中。代表作「石狩川」は現在入力中である。四作品を読む限りでは、登場人物たちのいきいきした語りが印象的である。
この中の「
白い壁」は、いかにもプロレタリア文学!としている他の作品とは少し異質な作品に思えた。
「白い壁」は、関東大震災の影が全面を覆っているものの主題は学園ドラマである。「低能」学級を受け持つ教師杉本とその生徒達の日々を描く作品である。一人一人のキャラクターが立っていて、テレビドラマが頭の中で自動的に放映されそうな具合だ。かつて小学校の教師をしていたという作者の体験が元になっているのだろうか。
しかしながら、読者を悶々とさせる内容でもある。実は筆者、少なくとも20年前のNHK「中学生日記」が苦手だった。同じく思われる方はもしかしたら途中つらくなるかもしれない。
何しろ、読者が望む解決はことごとくなされない。特に最後の場面。生徒の言葉はその後の暗雲を現しているみたいだ。
御安心あれ。それでも展開はスピーディ、生徒の喋りはいきいきしている。伏せ字もなんのその、悶々としながらもどんどん先を読み進んでしまうことだろう。
忘れられない言葉がいくつかあるが、その内の一つ。智能検査をしようとする杉本と、帰りたい生徒川上忠一が対峙する場面の初め。
それほど本当のことを何の怖気もなくぱっぱっと言ってしまう子供たちから、受持教師の杉本は低能児という烙印(らくいん)を抹殺したいとあせるのであった。もしこの小学校の特殊施設として誇っている智能測定が、まことに科学的であるというならば、子供の叫ぶ真実が軽蔑される理由はないではないか——「なあ……」と杉本は話しかける。「お前の思うとおりをじゃんじゃん答えるんだぞ。父(ちゃん)はどんな職業(しょうばい)だい?」
(太字は筆者による)
(21日17時過ぎ:コメント欄で御指摘いただいた間違いを訂正しました。土屋さん、ありがとうございました。)

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