「福島の破綻に立ち向かう人を思い、今日の天声人語は、宮沢賢治の「グスコーブドリの 伝記」を引いている。冷害による飢餓を、身を賭した、火山島の人為的爆発で阻止した技師の物語だ。青空文庫にあること、それだけ なら、私にも伝えられる。
http://tinyurl.com/qzgc2m」と18日にTwitterでaobekaさんがつぶやいていた。(うちは朝日新聞をとっていないので記事の内容はわからない。)aobekaさんのこのつぶやきを読むまで賢治の「グリコーブドリの伝記」に思いが及ばなかった自分の鈍さを反省しつつ話に入っていこう。
主人公は、グリコー家のブドリで、彼は、ナドリという父と名前がわからない母とネリという妹の四人家族だった。(なんでそんなややこしい名前なのか?)飢饉の年、父と母は、森の中へ言ってしまう。自分達が消えることによって、子供達の食い扶持を保つために。妹のネリも知らない男にさらわれてしまう。それでも生きていくことを選択したブドリは、うさんくさそうな人たちとめぐり合いながらも経験を自分のものとして生きる。クーボー博士と知り合ったのを縁に、博士の紹介で火山局の技師ペンネンナームの下で働くこととなる。そこでは地震があり、火山の噴火がある。年月は、ブドリに自信がつけさせ、一人前の技術者となっていく。ブドリが27歳のとき、
「どうもあの恐ろしい寒い気候がまた来るような模様でした」そこでブドリは考えた。
ある晩ブドリは、クーボー大博士のうちをたずねました。
「先生、気層のなかに炭酸ガスがふえて来れば暖かくなるのですか。」
「それはなるだろう。地球ができてからいままでの気温は、たいてい空気中の炭酸ガスの量できまっていたと言われるくらいだからね。」
「カルボナード火山島が、いま爆発したら、この気候を変えるくらいの炭酸ガスを噴くでしょうか。」
「それは僕も計算した。あれがいま爆発すれば、ガスはすぐ大循環の上層の風にまじって地球ぜんたいを包むだろう。そして下層の空気や地表からの熱の放散を防ぎ、地球全体を平均で五度ぐらい暖かくするだろうと思う。」
「先生、あれを今すぐ噴かせられないでしょうか。」
「それはできるだろう。けれども、その仕事に行ったもののうち、最後の一人はどうしても逃げられないのでね。」
「先生、私にそれをやらしてください。どうか先生からペンネン先生へお許しの出るようおことばをください。」
「それはいけない。きみはまだ若いし、いまのきみの仕事にかわれるものはそうはない。」
「私のようなものは、これからたくさんできます。私よりもっともっとなんでもできる人が、私よりもっと立派にもっと美しく、仕事をしたり笑ったりして行くのですから。」
それから三日の後、火山局の船が、カルボナード島へ急いで行きました。そこへいくつものやぐらは建ち、電線は連結されました。
すっかりしたくができると、ブドリはみんなを船で帰してしまって、じぶんは一人島に残りました。
そしてその次の日、イーハトーヴの人たちは、青ぞらが緑いろに濁り、日や月が銅いろになったのを見ました。
けれどもそれから三四日たちますと、気候はぐんぐん暖かくなってきて、その秋はほぼ普通の作柄になりました。そしてちょうど、このお話のはじまりのようになるはずの、たくさんのブドリのおとうさんやおかあさんは、たくさんのブドリやネリといっしょに、その冬を暖かいたべものと、明るい薪で楽しく暮らすことができたのでした。
なぜブドリは残ることを決めたのか。それは、一人で森へはいった父ナドリの生き方をなぞったというふうに考える人もいるだろう。使命感という考えもある。宮沢賢治の永久の問いに私は立ち止まってしまう。
さて、aobekadさんのつぶやきにもどろう。福島第一原発では、放射のという危険の中、食べ物も睡眠もとる間を惜しんで大勢の人が働いている。私達が今一度楽しく暮らすために。

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