本日公開の長谷川時雨「
水色情緒」は、泉鏡花作品についての回想である。1941年に出版された「鏡花全集 第十三巻」の月報に掲載された。
鏡花の作品に登場する女たち。作者長谷川時雨によるその紹介の仕方が実に魅力的で、女一人一人の姿が立ち上がってくるようだ。その姿を追って、作品の中に入りたい気分にさせてくれる。
時を超える作品を書いた鏡花は、1939(昭和14)年に亡くなった。この回想が月報に掲載された2ヶ月後、1941(昭和16)年に亡くなる時雨は、鏡花の生きていた世界と去った後の世界をしっかりと見つめていたと思う。
今の世に、私たちには許されない我儘、それを先生の作物はみんな許されてゐる、ゆるされてゐなければ戰つてゐる、誰も彼も女は實に勇敢だ、優しさうに見えて――みんな糸薄、糸萩、露のなでしこといひさうな風情に見えて、それでゐて心は實に強い、實にたまらなくそれが嬉しかつた、男性を向うへ※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)しての宣戰です。それこそ男なんぞは知らない優越を感じたので、誰でも鏡花宗になる時代は屹度一度はある筈です、なければよつぽど不思議な位、そんな女は夢を知らない、御飯とお金と慾情だけ――といふ風にもまあとれなくもないでせう。

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