昭和五年と云えば、つい先頃のことだが、その年の全国町村長会議は、婦人公民権案反対を決議した。翌六年満州事変が始ってから、あらゆる婦人参政権獲得に関する運動は、軍事目的のために圧倒され、婦選案などは議会にとり上げられさえもしなくなって来た。
ところが五年の議会ではまたこの公民権がもりかえされて、ともかく衆議院では可決されるところ迄こぎつけたが、貴族院では審議未了となり、全国町村長会議では、婦人公民権案に反対を決議しているというのは、実に町村長などという地方的有力者に代表されている一般観念の根づよい偏見と保守性を語っている。