お恥ずかしい話だが、近頃、風呂に入るのが億劫になってしまった。面倒なのでシャワーで済ますことが増えたのを何とかしたいと考えた。入浴が楽しくなる方法はないかと悩んでいると、ふと風呂場に本をもちこんでいるという女友達の話を思い出した。そういえば、とある女性タレントも入浴中に読書をするとどこかで発言していたような気がする。
さて、具体的にどのようにバスルームに本をもちこむのか? 本を濡らさないためにはどうすればよいのか? 本を湯船に落してしまうことはないのか? 友人たちに相談してみることにした。
「
寝転がれるバスタブの一部に板を渡して、小さなデスクを作り、そこにワインを置いたりしながら、本を読んでいた」というスペイン人のお友達の例を紹介してくれた人、「
やはり本は濡れるので、濡れてもいい本しかもちこみません。それから、あまり難しい本はのぼせてしまいます」とか、「
湯船の蓋を見台代わりにして、そこに乾いたタオルを敷くといい 」と、入浴読書を実践している人々、「
仏革命のマラーのように仕事は風呂場ですると決める(暗殺される可能性を考慮する)。文庫本は風呂の中に落とすものと覚悟しておく。手ぬぐいで濡れた手を拭きつつ読む。40度のぬるい湯に呑気につかる。手元に焼酎グラス。あと、風呂場が書庫にならないよう注意する。以上。」という達観した意見を聞かせてくれた人など、とても参考になったが、
お風呂で読める本というのを教えてくれた人がいた。
この「風呂で読む文庫100選」には青空文庫収録作品もいくつか見えるが、
「人間失格」や
「瓶詰地獄」など、入浴中に読むにはどうかと思えるものもある。
そこで青空文庫内を
検索して、入浴読書に適するテクストを物色してみた。
海野十三
「電気風呂の怪死事件」や田中貢太郎
「風呂供養の話」は避けたいところだ。前者はタイトル通り風呂場で感電死する話、後者は風呂場に現れる幽霊の話だからだ。
個人的にお薦めしたいのは
岡本綺堂である。特に
「半七捕物帳 湯屋の二階」、
ゆず湯などを読むと、昔の湯屋(銭湯)が様々な情報が交錯する「場」としていかに有効に機能していたかに改めて気づかされる。さて、
ネットは如何であろうか?
また、「それじゃあ俺も一ッ風呂泳いで来ようか」などという粋な記述に浸るも良し。

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