ジュール・ルナール(Jules Renard)は1864年
2月22日生まれ。『にんじん』は理解し合えない親と子をめぐる自叙伝的寓話集だ。
宮本百合子は、「
若き精神の成長を描く文学」の中でこの作品の主題が「親と子という血の近さではうずめられない大人と子供の世界の、無理解や思いちがいという程度をこした惨酷さ」であるとし、「
生きつつある自意識」の中でこの作品を「どうしてあの小説が既成の社会通念――大人の世界のものの考えかたの俗悪な形式主義への抗議でないといえよう」と評している。
私は頑固な父親と人柄の悪い義母に育てられてヒネクレてしまったので、にんじん君の心の動きはとりわけよく分かる気がするのだが、もしかすると、世の中の親子というもの、みんな多かれ少なかれ、こんな感じなのかもしれない。
『にんじん』は青空文庫にはない(ちなみに、岩波文庫で
岸田国士による翻訳が1950年以来、版を重ねている)が、
原文(仏語)が Project Gutenberg にある。
気になっていた単語をさっそく調べてみた。「赤い頬っぺた」の章の「あめちょこ」である。もとの単語は "Pistolet" だった。仏和辞典で調べると、「1. ピストル、拳銃。2.(話)変わったやつ。3.スプレーガン、吹きつけ器。4.[パン]ピストーレ(縦に割れ目の入ったソフトパン)。5.雲形定規。」とある。寄宿舎で室長から同性愛的な接吻を受ける美少年に対して、にんじん君が呼びかける際に使った言葉だ。2 かな。もう少し調べてみよう。それにしても、訳語の「あめちょこ」って何なんだろう。1950年ごろには意味の通じる単語だったんだろうけど。

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