去年の七月に世話役の方々に青空文庫にある一冊を紹介してもらった。そのとき、浜野さんが、原民喜の「心願の国」 を推され、
ーこの作品は、僕には「夏の1作」である。作品の内容とは関係なく、じりじりするような暑熱の中でこそ読むべきものという思いが強い。ー とお書きになった。
ではその対極にある「冬の1作」というと何だろう。降りしきる雪を見ながら、もしくは寒さで歯をがちがち言わせながら読むべき作品。私はこれを推す。
「眼を開く」 夢野久作
映画の名作「イルポスティーノ」を彷彿させる話である。
夢野久作が書く、吹雪の中に埋もれた”人の真実”。
あまり多くは書かないでおこうと思う。短い文章なので、読んで欲しい。それも吹雪の夜に。春がもうそこまで来ているから、早く読んで欲しい。

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