物理学者・石原純の命日(1947年)にちなみ、宮本百合子「
科学の常識のため」を読んだ。この作品の中に、彼の名前が登場しているのだ。
ある科学書の訳者から贈られた本をきっかけに、作者は様々な分野の科学の本を紹介する。
このエッセイは、女性を読者対象としていた雑誌向けに書かれた、科学書ガイドである。しかし、アインシュタイン(?)の言葉に触れた箇所を除けば、性別関係なく参考になる。文庫本・新書を中心に選書しているのには好感がもてる。岩波のが多いなぁと思うけれど。
電車読書の視点から選んだのだろうか。
発表されたのは1940年にもかかわらず、今でもこのガイドは道しるべになる。書店や古書店で購入できたり、図書館で読めたりする本が何冊もあるのが嬉しい。いつかネット上でも共有できる日が来る事を願う。
ガイドとは別に、印象に残った一文。
贈られた本『科学の学校』の著者コフマンに触れた、
コフマンのもう一つの特質として、この本の中ででも、人間の精神的な物質的な努力が文化を進めて来た事実をしっかりと理解してそれを語っている点である。単純な楽天で、人間万歳を唱えているのではなくて、刻々の個人と社会との努力の価値を大切なものとして評価し、人間が理性的なもので、その判断と行動とで人間自身を救うものであるという根本の信頼を失わないところが、著者の意味ふかいねうちである。
時代への願いも込めた文だと言ったら、言い過ぎだろうか。

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