この時期、近くの商店街では七夕飾りで普段よりは華やかになる。といっても大掛かりなものではなく、笹一本一本に飾りをつけて、通行路の傍らに立て掛ける程度、ささやかなものである。
今年は、短冊とペンもあちこちに準備されていて、通行人が願いごとや川柳を書いて笹に吊るすことができるようになっていた。百人一首を達筆に書いたもの、絵馬のように「××高校合格!」と祈るものもあったが、大半は幼い字で書かれていた。「○○さんと なかよくできますように」「もっと はやく はしれますように」と。
願いが短冊と共に天へと挙げられるからか、短冊に書かれた願いが後の世まで残っている例を私はほとんど見ない。
その貴重な例の一つを、太宰治「
作家の手帖」の前半で知る事ができた。
女の子の願いは慾張っている!と作家である「私」は昨今の状況を憤り、一方では七夕をネタにして小説を書きたいなぁと思いながら歩いていくと、
お蕎麦(そば)屋の門口にれいの竹のお飾りが立っている。色紙に何か文字が見えた。私は立ちどまって読んだ。たどたどしい幼女の筆蹟(ひっせき)である。
願いの是非はともかく、残されてよかったと思う。
彼女が過ごした時代を、後世の人達にいつまでも伝えてくれるからだ。
参考:
「太宰治作品リスト(執筆順)」(北田信さんのサイト「太宰治論」より)
http://www007.upp.so-net.ne.jp/dazai-kitada/sakuhinlist.html
明日も私Jukiが書きます。tenさん、うにさんファンの皆さんごめんなさい。

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