先日テレビをみていたら、kinki kidsのダブル堂本がでていた。剛君だったか光一君の方だったか、肝心なところを忘れたが、「女性を抱きしめるより女性に抱きしめられたい」と言っていた。その言葉を聴いてふと太宰治を思い出した。
タイミングよく「十年一覚蒼穹夢」で「桜桃忌」に企画された
「ダザイズム、酔いしれるのは、どれですか? 」 投票結果は、どうやら作品の好みが散らばっているようだ。
私は、コメントに「永遠のヒーロー」と書いたが、「永遠のスター」の方が太宰に合っているかもしれない。道化になりたかった太宰である。太宰と道化を論じたらきりがない。きりがないことは書かない。その変わり期限付きの命について書こう。
男が死にたかったのか、女が死にたかったのか、それとも二人とも死にたかったのか・・・。有島しかり、太宰しかり、本当のところはわからない。二人の死は、二人のものである。それを十分踏まえてつらつら考えてみた。私がいろいろな人の話を聞いて、総括するには、男は、女に「一緒に死んで」と乞われたら、断れない生き物らしい。もちろんキライな女性だったら、いざ知らず、少しは心にあった場合の話である。
ある女性は、生きることに疲れていた。死の甘美が彼女の周りを取り巻いた。こうやってみんなと酒を飲んでいても、感じるのは孤独だけ。隣に座った単なる飲み友達の妻子持ちの男性に「一緒に死んでくれる?」と言ってみた。男は即座に答えた。「ああいいよ」と。二人は、飲み会をいつもの顔で通し、誰一人気づかれることなく、みんなと別れた。別れた後、二人は真冬の一級河川の土手を歩いた。そして太宰たちのように男の腰と女の腰を紐で繋いで、川の中央に向かって無言で水の中を行った。どのくらい行ったか・・身体の芯まで凍りそうになった女の目に男の苦しそうな顔が見えた。女の目に映った男の苦しそうな顔が、女はこの人と一緒に死ねないと思った。苦しむ顔をするような人とは一緒に死ねないと。それは女のプライドと思いやりだろう。女は「貴方を巻き込むわけにはいかない、いかない・・」と叫んであるったけの力で岸の方へ男を連れて行こうとした。
その後数十年してその男が病気で亡くなった。私はお会いした事はなく、名前だけ存知ている方であったが、この話をしてくれた彼の友人は、「どう思うかね。真実は小説より・・・なんだよ」と言って目を細めて笑った。
さて岸に帰ってこなかった太宰治に語りかける詩がある。
「水中の友」 折口 信夫
ーいつまでも ものを言はなくなつた友人――。
もつとも 若かつたひとり――。
たゞの一度も 話をしたことのない
二三行の手紙も 彼に書いたことのない私――
併し 私の友情を しづかに 享けとつてゐてくれた彼を 感じる。 ー
ー太宰君の内に、早くからゐた芥川龍之介が、急に勢力を盛り返して來た。悲しんでも、尚あまりあることである。ー
太宰の中に芥川を見ていた折口の言葉である。折口の弟子が太宰の友だちだった関係で、太宰の死後乞われて書いたものらしい。太宰の中に芥川があったかどうか・・私はないと思うのだが・・芥川にユーモアはあっても道化はないように。
玉川上水で情死するなど、今の高校生に言ったら・・なんで?そんなところでそんな甲斐性のない男と死ななければならないん??ダサイじゃん!!・・・・という返事があるような気がする

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