私はあまりテレビは見ない。情報として今年の大河ドラマは義経だということは知っている。それもタッキーこと滝沢秀明が義経を演じている。平家物語に書かれている義経は、決して美男ではない。たしか醜男とはっきり書かれていたように思う。
「判官びいき」という言葉、各地にのこる伝説、海を越えてモンゴルに渡ったという説もあるくらいだから、アイドル中のアイドルである。それも息が異常に長い。
そのアイドルは幼いときから、アイドルであった。
「牛若と弁慶」楠山正雄
ー弁慶(べんけい)は両手(りょうて)を地(ち)について、
「わたくしはこれまでずいぶん強(つよ)いつもりでいましたが、あなたにはかないません。あなたはいったいどなたです。」
といいました。牛若(うしわか)はいばって、
「おれは牛若(うしわか)だ。」といいました。ー
確か京都の五条の大橋に牛若と弁慶の像があったと思う。二人を巻き込んだ大きな渦。戦の才覚に秀でていたために背負わなければならなかった不幸。戦の才覚を発揮した壇ノ浦の後、牛若こと源九郎判官義経が夢に見ていたものとは?案外母、常盤の懐のぬくもりだったのではないか。
ーちょうど冬(ふゆ)のことで、雪(ゆき)がたいそう降(ふ)っていました。常磐(ときわ)は牛若(うしわか)を懐(ふところ)に入(い)れて、乙若(おとわか)の手をひいて、雪(ゆき)の中を歩(ある)いて行きました。ー
春の夜の夢のごとく時代を駆け抜けていった者どもの夜な夜な見し夢は何だったのか・・・その夢に振り回された女たちの夢は何だったのか・・
春昼に暗き祠や尼将軍 鎌倉にて ten

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