でぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
暑いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ
盛夏の松本は暑い。とにかく暑い。大好きな街ではあるが、それでも嫌になるほど暑い。
行く当てもなく、身体中から汗を流しながら、それでもなおフラフラと松本の路地をうろつくうち、松本市役所のすぐ傍に下馬出し通りという狭い路地を見つけ、路地にかぶさる塀の影に誘われるままに足を踏み入れると、そこにいきなり現れた昭和の匂いがぷんぷんと匂うレトロな喫茶店。
その名も塩川喫茶部。
ガラス越しに書かれた毛筆のお品書きが、枯れた店の佇まいに実によく合っている。
あぁぁぁぁぁぁぁぁ。 クリームソーダが飲みたいぃぃぃぃぃぃぃ。
夢遊病者のようにガラス戸を空けて店の中に入る。うひょひょ。店内の雰囲気もこれまたいい感じ。
「あらあら。すごい汗。今日は暑いものねえ」
お冷を持って現れたおばちゃんは、まるで浅草の老舗宿の女将のような雰囲気。ゆったりとした空気を辺りに発散させながら、その癖、ピンと伸びた背筋が美しい。僕はこういうおばちゃんが好きだ。
「クリームソーダ下さ〜い」
「はい。クリームソーダね。うちのアイスクリームは自家製だから、きっと汗も引くわよ」
「そりゃあ、助かるなあ。とにかく汗かきなもんで」
「アイスクリームだけじゃなくて、あんみつのあんも寒天もシロップも全部手作りなんですよ」
「うひゃあ、そりゃすごい」
何がすごいんだかよくわからないが、暑さで朦朧としているため、頭が勝手にびっくりしている。
全部手作りと言いながら、全然自慢たらしくない言い方が清々しくて、ついつい言葉が弾んでしまう。
「じゃあ、クリームあんみつも貰っちゃおうかなあ」
クリームソーダに浮かんだ真ん丸のアイスクリームを半分食べてから、ソーダ水に残りのアイスクリームを溶かし、ジュージューとストローで一気に飲み干す。
かぁぁぁぁぁぁぁぁ。喉にくるなあ。
本当はアンコが苦手な僕なのだが、ここのクリームあんみつは特別だった。まさに涼を取るといった爽やかな味が喉元を通り過ぎて行く。
あんは、北海道産の小豆をかまどでじっくり煮み、ソフトクリームは練乳から作っているとか…。
おばちゃんと語らいながら30分ほどの時を過ごし、さっぱりした気分で店を出る。
次はどこの路地に紛れてみようかな。
そんなことを考えた直後、僕は自分の影を見下ろしながら、だらしない事にすぐに呻いてしまう。
でぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
やっぱり……暑いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ

甘味喫茶 塩川喫茶部 TEL 0263-32-2818 住所:長野県松本市大手4-12-8 営業時間:11:30〜19:30(夏期は延長)定休日:水曜不定休

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