チェンジングルームへ入ると膝の故障から復帰したD氏が入り口の近くに、奥へ進むと「Good Morning, Sensei!」と笑うCさんが居た。
某所での稽古で肩の筋肉を壊し、入院から加療されているとの連絡をいただいたのは、もう1年近く前、話を聞くと、その後も回復が思わしくなく、結局問題なく動かせるようになるまで、10ヶ月を要したという。
その後、気にはなってはいたけれど、年齢的なこと、また、もう復帰はされないのではという思いもあり、こちらから連絡するのもためらわれていた。
こういう人がまた稽古に復帰してくれるのは、本当に嬉しい。
稽古は、復帰したCさんに合わせて座技正面打ち一教の受身から。
正座した状態から、一人で正面に打ち込み、身体をうねらせ、腕を返し、伸ばし、畳に腹ばいになるまでの一教の受身を一人で取る。ゆっくりと身体を柔らかく使った動き。
身体のすべての関節を緩め、身体を一つの固体として固めない、身体の使いと体質を変えて行くには良い稽古となる。

この感覚を残して正面打ち一教。
当たらず、力まずに相手を導くように、そして相手の中心を攻めながら、ゆっくりと動く。
受けは身体を柔らかく使って、伸びやかな受けを取る、緩く柔らかい型稽古。(「型」はこれまで「形」と認識していましたが、今回より「型」に変更します。)
まずは、正確な動きを認識してもらう、そして良い動きによる「良い感覚」を体感してもらう。
その「良い感覚」が、どのように状況が変わっても感じられるように動けるようにすること。
稽古は、そんな手順で進めるのが良いのではないかと思う。
力任せにガツン、ガツンと当たる稽古を続けていても、力による強引な動き、単なるフィジカル エクササイズを続けるだけで、本来の技の動きや身体の使い方は得られない。
体質を柔らかく変えること、しなやかで粘りのある身体を作ること、一見遠回りのように思えるかもしれないが、実際には、この方が結果的には早道になるのではと思っている。
稽古の途中で、復帰したCさんと少し話しをした。
若い頃から、自宅で暇があると筋トレをしていたというCさんは、強い上体の筋肉を持っている。しかしながら、筋トレで作られた身体にありがちな硬い体質でもある。
今回話したのは、まず、怪我をしない稽古を心がけること。 やはり、ミドルエイジになってからの怪我は治りにくくなる。 そして、怪我をすれば、その間は稽古が出来なくなり進歩も止まる。
そのためには、怪我をしにくい体質を作るためにも、体質を柔らかく変えて行くこと。
そして、今後は昇給審査にもトライして行って欲しいということを伝え、その趣旨に沿った稽古をして行くことを確認した。
続いては、崩しをメインにした片手取り呼吸方。
しっかりと力一杯持たせたところから、崩しをメインにして動いてみた。
ポイントは入身では入るときの腕の使い、わずかに角度を変えて、腕を螺旋に使って力の方向を変えれば、相手は簡単に崩れてくれる。 この崩しをメインに、振りかぶりから腕の振り下ろしまでの一貫した流れで動く。
腕は硬くしないこと。 腕が硬くなれば、相手は腕に力を伝えられるようになり、瞬時に押さえられてしまう。 特に振りかぶった後、振り下ろす際に強く投げようとして硬くなりがちになる。
振り上げた腕は、捨ててしまうように放り投げる、鞭のような感覚というのが伝わりやすいかもしれない。
捌きを変えて横面打ち一教。
捌きは変わっても、冒頭の柔らかい一教の動きで動く。
捌きを変えても同じように動けているか確認する意味も含めて動いてみた。
正面打ち入身投げは、脚捌きの確認。 入身−転身−転換 そして再度、転身して腕の振り下ろし。
暇があれば、一人で動いて身体に覚えさせてしまえばいい。 脚が固まれば、その後は、入身投げが崩れることは無くなる。
最後にかかり稽古で思い切り良く動いて、しっかりと持たせた座技呼吸法で終了。
かかり稽古のテンポも大分良くなってきた。

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