昨日の千秋楽、興味は二つの取り組みにあった。
大関 魁皇に関脇 白鵬は、引退と優勝のかかる一番、横綱 朝青龍に大関 栃東は、優勝と来場所への綱取りがかかる一番。
各力士の思惑がかかり、各力士共に負けられない一番で、四人がどのような相撲を取り、どのような結果が出るのか?
休日でもあり、逸る気持にも押され、いつもより早く三時(日本時間 四時)過ぎから、NHKワールドの相撲中継を見始めた。
番付が進み、出番が近づいて、魁皇、白鵬の両力士が花道に立つ。
負ければ引退と思われる角番大関、昨夜は良く眠れなかったのでは、と思われるほど生気が無く、目にも力が感じられなかった魁皇の顔が、仕切りを繰り返すうちに穏やかに落ち着いた表情に変わってきたのが印象的だった。
引退をかけた大一番。 最後になるかも知れない一番を前に、気持が吹っ切れたのだろうか、もとより、これまでも、何度と無く気持ちの弱さを見せてきた大関である。逆に白鵬の目に、やや迷いのようなものが、仕切りを繰り返すうちに出てきたような感じがした。
重圧から共に一度では立てず、待ったの後、二度目は綺麗に立つと、魁皇が上手く得意の右四つに組みとめ、十分な態勢から必死の寄りを見せると、プレッシャーからか、やや動きに鈍さの見られた白鵬は堪えられずに土俵を割った。
魁皇の大関と現役への残留に対する意地と執念を見た思いのする力の入る相撲だった。
勝てば自力優勝の朝青龍、こういう一番での朝青龍の強さは衆目の知るところではあるけれど、栃東もここで負ければ、来場所の夢は無くなる。
勝負は立会いの一瞬、ほんの僅かに遅れを取った横綱の右を、左からの厳しい攻めで完全に封じた栃東の下からの押しに、朝青龍は完全に態勢を崩されながらも、上手く回り込もうとしたが、かなわず土俵を割った。 右を殺そうという作戦と、立会いの勢い、大事な一番にかかる大関の意地を見せたこれも力の入った一番だった。
この結果、優勝は共に敗れた朝青龍、白鵬による決定戦へ。
立会いの後、一旦左四つに組んだ体勢を、朝青龍が実に素早い巻き替えで右四つに変えた。 白鵬の吊りを堪えた朝青龍が寄るが白鵬も堪える。 動きが止まった後、白鵬が仕掛けに出た瞬間、朝青龍が狙い済ました右下手投げを打つと、白鵬の身体が鮮やかに浮いて投げが決まった。 出るタイミングで投げる、まさに合気道のような素晴らしい技だった。
仕掛けと技のタイミング、このあたりは経験の差が出たのかもしれない。

勝負と技の醍醐味が味わえた、素晴らしい千秋楽だった。
こういう相撲が続けば、間違いなく、また相撲人気も復活する。 そういえば、今場所は引き技や前に落ちる相撲も少なかったと感じる。
優勝争いの前のもう一つの興味は、7勝7敗で勝ち越しの懸かっていた前頭二枚目の安馬の琴光喜との一番。 足を滑らせた安馬の動きが逆に有利に働いて、琴光喜を送り出しに破り、勝ち越しを決めた。
幕内最軽量、小柄な自分には、こういう力士の活躍が嬉しい。
二場所連続で準優勝の白鵬は大関に昇進して、栃東の綱取りも継続、下からは十両で全勝優勝したエストニアの巨漢 把瑠都が上がって来る。 来場所の相撲も面白い。

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