6戦6勝、無敗で三冠最後のレースに挑むディープインパクトのレースを、久々に競馬独特の緊迫感を感じながら堪能させてもらった。
刻々と迫る締め切りとスタート時間、段々と切羽詰まってくる緊張感が競馬の一つの醍醐味でもある。 馬券を買うのであれば、この数十分の間に、さまざまな思いが頭を過ぎり、締め切りの時間へ向かって追い込まれて行く。 ここまでが競馬の一つのステージであり、馬券購入が終わって望むレースは、また別のステージとなる。
ゲートが開きスタートが切られれば、後は実際のレースを見届けるだけ。 「サイは投げられた。」という踏ん切りからか、スタートの直後には、奇妙な安堵感さえ感じられる。
75%を超える圧倒的な単賞支持率を受けて、無敗で挑む三冠最後の「菊花賞」。そのレースへ望む騎手の心境はいかばかりか? そんなことも思いながら、画面を凝視していた。 一本かぶりのレース、当然、秘策を考え負かしに行こうと考える騎手も居る。 プロのジョッキーは、みすみす勝負をあきらめていたりはしないものだ。
デビュー以降、JRA記録の数々を塗り替えている天才騎手 武豊は、馬道へ向かうディープインパクトの鞍上で、笑顔で会話する余裕を見せていた。 強い精神力は、重ねてきた実績による自信によって培われるのだろう。

絶好のスタートでゲートを出たことが災いしたのか、スタートから一週目のスタンド前へかかるあたりまでは、行きたがって折り合いを欠き、大丈夫かと思わせたディープインパクトを、天才騎手が上手くなだめて、 落ち着きを取り戻して流れに乗せた。 4コーナーで好位に上がり、追い出すと横山典弘の好騎乗で逃げ込みを図るアドマイヤジャパンを一気に捉えて突き放す圧勝で無敗の三冠を達成した。 実に強い勝ち方で、まさに圧勝。
放送がNHKだったので、特に印象に残る実況は無かったが、二度目の偉業が達成された瞬間を目にすることが出来た。 21年前の「今、赤い菊の大輪が、薄曇りの京都競馬賞に大きく咲いた。我が国競馬史上、不滅の大記録が達成されました。」という」ルドルフのときの名実況を思い出した。
さらに、「名人」と称されていた、武豊の父、武邦彦氏がキタノカチドキで、菊花賞に望んだ際に、「もし、この馬がひっかかって折り合いを欠き、惨敗するようなことがあれば、騎手を辞めよう。」との思いで、辞表を持ってレースに臨んだというエピソードが思い出された。 ひっかかるディープインパクトを上手くなだめての勝利は、親子二代で、巧みに馬を制して菊花賞を制したことになる。
二着のアドマイヤジャパン 横山典弘の騎乗も賞賛に値する。負かすとすれば、この展開というパターンを正に実践して見せた。まさにプロの勝負を見せてもらった思いがする。 聞くと菊花賞は3年連続の2着とのこと。 人馬ともに死力を尽くしたいいレースだった思う。
窓辺から秋の気配を見せてきた香港の空を眺めながら、秋の淀を想い、素晴らしいレースを堪能した午後だった。
夕方からの新たな高揚は、日本シリーズの第2戦。
初回にエラーで先制点を与えた後は、初戦同様、打線も沈黙。 タイガースは、いいところ無く完封負け。 プレイオフを制して波に乗るチームとシーズンを終えて、一息入ったチームとの勢いの違いか? このままでは、恥かきシリーズになってしまうので、本拠地へ戻っての奮起を願う。 20年前はシリーズも制して日本一だった。

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