娘から頼まれて買ったCDに入っていた。
2ヶ月ほど前、仕事の合間に銀座の山野楽器へ行くと、ちょうどそのCDのプロモがかかっており、何曲かを耳にした。 春の情景が浮かぶ日本的な「桜色舞うころ」という曲に続いて流れたのは、「.朧月夜〜祈り」菜の花畑に入日薄れ、で始まる文部省唱歌にアレンジが加えられた曲。 桜と菜の花、自分の中にある日本の原風景のようなものが見えて、ああ、いいなと感じた。

ひと月くらいして、そのCDは香港でも発売された。
夕方に立ち寄ったHMVでも、何度も耳にした。 後で知ったけれど、この人のCDはアジア全般でも売れているらしい。 実際、自分も購入したのは、東京の後に立ち寄った台北、台湾のCDショップでは、実に沢山の日本のCDが現地盤で販売されている。 この中島美嘉のCD「SONGS」を昨夜、銅鑼湾で自分用に購入した。 今度は中国盤、価格は香港盤よりも大幅に安かった。
改めてしっかり聞いてみても、やはり、春の空気が感じられる頭の二曲が断然いい。
文部省唱歌である「朧月夜」 では、季節と情景が浮かび、ノスタルジアを感じる。
「朧月夜」に限らず、文部省唱歌には、季節を唄ったものも多い、「早春賦」、「花」、「春の小川」、「こいのぼり」、「夏は来ぬ」、季節感と生活情景を、格調高い文体で、実に鮮やかに伝えている。
聞くところによると、最近はこういう文部省唱歌はもう音楽の教科書には乗っていないのだという。 生活様式や風景が変わり、情景や言葉がもう現代では理解されないのだという。 じつにもったいないことだと思う。
情景や言葉が現在と変わってしまっているというのであれば、説明してやればいい。
こういう格調の高いものは、もう作れないだろうし、こういう日本の情緒溢れるものに、感性の若いころに接することなく成長してしまうのは、実に惜しい事だと思う。
朧月夜 (作詞 : 高野辰之 / 作曲 : 岡野貞一) (文部省唱歌)

菜の花畠に、入り日薄れ
見わたす山の端、霞ふかし
春風そよふく、空を見れば
夕月かかりて、におい淡し
里わの火影も、森の色も
田中の小路を、たどる人も
蛙のなく音も、かねの音も
さながら霞める、朧月夜
中国盤は二枚組だった。 二枚目の一番後ろには、「月の沙漠」が入っていた。
自分が幼稚園から1年生くらいのころ、亡父が良く唄ってくれた歌。思わぬところで再会して、当時の家の様子や亡父のことなどが思い出された。

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