ここは、森・・・ではなく、アミーナさんの農園です。
アミーナさんの農園には、いろいろな果樹や作物が植わっていますが、中でもカルダモン栽培に力を入れています。
カルダモンは、ジンジャーに似た多年草で、
根茎から数本の茎を出し、花をつけます。
花の後にできる、つやつやと美しい緑の実の中には、小さなゴマ状の種が入っており、この種に強い香りと味があり、種が黒く熟した頃が摘み取りの時期です。
カルダモンの不思議なところは、カルダモンは、葉っぱのついている上方でも、土の中でもなく、地表に沿って伸びた茎に花や実をつけること。
カルダモンファームを歩き回って、ごそごそとカルダモンの葉をかきわけて地表を覗いた時に、こんなふうにいっぱい実が生っていると、すごく嬉しくなってきます。
ザンジバルの農園は、どこも地球に優しいアグロフォレストリー。
アグロフォレストリーというのは、単一栽培のモノカルチャーとは正反対で、農園の中にあれこれと複数の農作物を植える方法です。
やれクローブだ、やれここにはパイナップル、そこにはジャックフルーツの木が、ココナッツがあるかと思えば、突然バニラのつるがバナナの木に巻きついている・・・といったように、私にはごちゃごちゃに植えられているようにしか見えない農園ですが、実は、互いに日陰を作って地熱を下げたり、熱射に弱い作物を守る役割をするためのシェイドツリー(日陰用の木)として植えられていたりという具合でちゃんとそれぞれ意味があるのだそうです。
また、作物によって根の伸び方が違うので、複数の作物を植えておけば、一定の深さの地面からだけ養分を吸い取って、土地を痩せさせてしまうことがありません。
また、作物によってつく虫も違います。複数の作物を混栽することで、それぞれが互いに害虫に対するバリアーの役目も担っているということまで含めて、土地の自然な循環体系を守る、いいことづくめのアグロフォレストリーシステムそのものになっているのです。
(このカルダモンのすぐそばに出始めている新芽は、クローブの木です)
カルダモンは日陰を好むため、シャドーツリーになる木があちこちに植わっていて、ちょっとした森のような農園でした。
実は、アミーナさんは、お父様を亡くされたばかりで、突然このカルダモンファームを弟さんと一緒に継ぐことになったのだそうです。
「父に教えてもらったとおり、あちこちに木を植えて、カルダモンの好きな日陰をたくさん作ってやりながら、弟と一緒に大切に育てていきます」
とはにかみながら言っていたアミーナさんに、この日は収穫の時期ではなかったので、今度は実が熟してたくさん収穫しているところを見せてくださいねと言うと、「カリブサーナ」(ぜひ来てください)と笑顔で言ってくれました。
乾燥したカルダモン。
カルダモンは、清涼感のある強い芳香があり、少量でも大きな存在感を示します。
古くから、サフランに次いで最も高価なスパイスとしても有名で、スパイスの女王と呼ばれることも。
サウジアラビアでは、来賓歓迎用のセレモ二ーにカルダモンコーヒーが欠かせないとか。
ここザンジバルでも、シチューやカレー、ピラウなどの料理はもちろん、クッキーやプリンなど甘いお菓子を作るときにも欠かせない存在。料理によって、丸ごと使ったり、黒くて固い種の部分だけを取り出して潰して使ったりしています。
スパイスは、1種類だけではなく、何種類か混ぜて使うと、互いの持ち味が溶けあって、料理の味や風味に幅が出るということで、ザンジバルの家庭には、今日ご紹介したカルダモンはもちろん、胡椒、シナモン、クローブ、チリ、などが常備されています。
私も、スパイス・アイランド(香辛料の島)ザンジバルで暮らす中で、スパイスをあれこれ使って料理をする楽しみを覚えました。
ところで、カルダモンは、消化促進効果や口臭を抑える作用があることでも知られていますが、ザンジバルの人たちも、おなかが張ったり痛くなると、カルダモンティーを飲んでいます。
まだ薬がなかった時代から、こうして対処してきたのでしょうね。

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