ここは、タンザニア南部のナカパニャ村。
甘くておいしいオレンジが、たわわになり始めたころのことです。
村の大人たちが、成人の儀をとりおこなうための楽器を取り出し、準備を始めました。
大人たちは、太鼓を叩いて各家を回り、まだ成人式をすませていない少年たちをさがします。
いい若者はおらんか〜♪
村に役立つ若者はおらんか〜♪
成人の儀式によって、立派な大人になりたまえ♪
成人式に出る子供たちの年齢は10歳ぐらいから18歳頃までと、ばらばらです。
大人になれるかどうかは、一人ひとりの成長の仕方によるもので、年齢ではないですからね。
まず、集められた子供たちは、村から離れた森の中に連れて行かれ、で何週間にもわたる集団生活の中で、成人になるための教育を教え込まれます。
動物の習性、森に生える植物や村の農産物のこと、自分たちの体の仕組みや性について・・などなど大人になるために必要な知識をいっぱい伝授されるのです。
一方、若者たちを送りだした村人たちも、迎える準備でおおわらわ。
成人教育を終えた若者が帰ってきたときに座るためのま新しいゴザ作り、カシューナッツから作る地酒の仕込みに、ごちそうや服の準備と、村をあげて大忙しです。
成人教育を無事終了した若者たちが、はれやかな顔で帰ってきました。
村をあげて、出迎え、歌や踊り、たくさんのごちそうでねぎらいます。
そして、この日から、背がおおきかろうと小さかろうと、年齢がどうであろうと、みな大人として扱われ、村の寄り合いなど、大事な相談事にも呼ばれるようになります。
一連の成人の儀式が終わって、村に日常がもどってきました。
厳しい乾季が過ぎ、待ちに待った雨季になっても、今年は雨が一滴も降りません。
草木は枯れ、動物たちが渇死し始めました。このままでは遅かれ早かれ、井戸も干上がり、村人たちの命も危険です。
大人たちは寄合いを開いて相談し、雨乞いをすることにしました。
全員黒い衣装をまとい、村のはずれにそびえ立つ神木バオバブの木を囲み、長老がバッファローの尻尾で作ったお祓い用の毛と太鼓で祈り始めました。
みんなで声を揃えて祈ります。
バオバブの精霊よ、どうかこの村に雨を降らせたまえ。
男たちは寝食を忘れ、祈り続けます。
三日三晩の祈りの甲斐あって、バオバブの木の上にぽつり、ぽつりと雨粒が落ちてきました。
男たちの祈りの声がさらに大きくなると、雨は村中に降り始め、からからに干上がった地面も息を吹き返し、ナカパニャ村に平和が戻ってきました。
この雨乞いでは、成人式を終えたばかりの若者たちも、不眠不休でよくがんばりました。
そうです。
成人するというのは、自分のことがしっかりできるだけでなく、村の役に立つ大人になるということなのです。
☆この一連のティンガティンガアートは、
アブダラ(ABDALLAH SAIDI CHILAMBONI )の作品です。

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