帰り道、目の前の空には星が蒔かれている。歩いているうちに星が見覚えある形を取り始めた。
ああ、さそり座。
「「あかいさそりの めだま」だったっけ。」
「いや、「あかいめだまの さそり。」」
無言。
「…後がどうだったか忘れてしまったよ。」
「…」
あかいめだまの さそり
ひろげた鷲の つばさ
あをいめだまの 小いぬ、
ひかりのへびの とぐろ。
オリオンは高く うたひ
つゆとしもとを おとす、
「さそり座ってあんなに大きかったっけ。」
後ろを振り返るが、
小熊のひたいの うへは
そらのめぐりの めあて。
目当ての星は雲の中。
宮沢賢治 星めぐりの歌

1