私は誰。私は愚か者。私は私を知らない。それが、すべて。
「私は誰?」坂口安吾
私は誰?
そんなことを考えることがあって、でも考えてもわからないのです。
私は私を知らない。まさにそのとおりです。
でもいつも思い出すことがあります。
あるファーストフード店でアルバイトをしていたときのことです。
日曜日、レジには他のバイトの子が入り、私は厨房で作業をしていました。
5歳くらいの男の子がお父さんお母さんと一緒に店内で食事していたのですが、ジュースをこぼしてしまったのです。すると、店長が私に
「maquiさん、行ってあげて」と言いました。
ちょっと不思議に思いながら途中の作業を他の子に託し、
お客さんを別の席に誘導し、ジュースのこぼれたところをきれいにし、店長の計らいで出されたジュースを男の子に渡し、元の作業に戻りました。
さっき私は不思議に思ったと言いました。
何が不思議なのかというと、なぜ店長は私を指名したのか、ということなのです。
他に手の空いている子はいたのに、なぜ。
私でなければならなかった?
この仕事をするのは私が適任だ、と店長が思ってくれたのだとしたら、それはとても喜ぶべきことなのではないだろうか。
私は誰?という問いに明確に答えているわけではないのに、いつも思い出してしまうのです。
このできごとを思い出すことで、私は私という存在を確認しているのかもしれません。

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