インターネットの図書館「青空文庫」の収録作品を紹介する有志による非公式ブログです。
十月三十日。晴。けさの二時に『子無しの堤』と云ふ、實際に人間らしい小説を五十三枚書き終はつたので、十時に起きて食事をすませると、一と息入れて來るつもりで車上を奧の方へ行つた。福渡りの宿屋が並んでる道を三四丁も行くと、その突き當りに白倉山(しろくらやま)のふもとなる天狗岩と云ふ大きな石が山にべッたりと廣がつて屹立して、その周圍もみなこうえふだ。