古今東西、酒を愛した詩人数多あれど、今日は海の向こう、ペルシャから。
「ルバイヤート」 オマル・ハイヤーム 小川亮介訳
愛(いと)しい友よ、いつかまた相会うことがあってくれ、
酌(く)み交(か)わす酒にはおれを偲(しの)んでくれ。
おれのいた座にもし盃(さかずき)がめぐって来たら、
地に傾けてその酒をおれに注(そそ)いでくれ。
読んでいて、「ペルシャって、今のイラン、イスラム教の戒律から禁酒じゃないの?」と思う人が多いだろう。私も最初そう思った。考えようによって、禁酒だからこその酒への詩情なのだろう。このオマル・ハイヤームという人、学者だったらしいが、変人でもあったらしい。世の中、こういう人がいるからおもしろい。
恋する者と酒のみは地獄に行くと言う、
根も葉もない囈言(たわごと)にしかすぎぬ。
恋する者や酒のみが地獄に落ちたら、
天国は人影もなくさびれよう!
笑いがこみあげて、「そりゃそうだ。天国ががらあきで、地獄が満員だ!」と妙に納得させられる。地獄におちてもいい酒が飲めれば・・そんな酒飲みの真骨頂は、やはりこれらだろう。
死んだらおれの屍(しかばね)は野辺(のべ)にすてて、
美酒(うまざけ)を墓場の土にふりそそいで。
白骨が土と化したらその土から
瓦(かわら)を焼いて、あの酒甕(さかがめ)の蓋(ふた)にして。
墓の中から酒の香が立ちのぼるほど、
そして墓場へやって来る酒のみがあっても
その香に酔(よ)い痴(し)れて倒れるほど、
ああ、そんなにも酒をのみたいもの!
なんら難しいことばはない。こんなに分かりやすくストレートな詩は、いまでもいろいろな言語に訳されているという。全編に通低する普遍の人生の悲哀。酒から人生へ。広がるイメージに遊んでみよう!
※jukiさんが急な都合で登場できないので、私が書きました。

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