一昨日に続き、リルケの作品を取り上げる。
「祭日 」 リルケ ライネル・マリア 森林太郎訳 。
この話は・・日本の法事の会席の情景と思えばわかりやすい。死者に縁のあった人が一同に会し、懐かしむ。
この話には、三つの時間があり、静止した死者の時間、流れる生者の時間、老僕の幻の時間。それらが微妙に絡み合って、未来への物語を作る。老僕の幻さえ受け入れる優しさを持った人たちが繰り広げる断章。
スタニスラウスは徐(しづ)かに手を振つた。人に邪魔をせられずに落ち着いてゐたいと思つたからである。けふかあすかは知らぬが、自分はもうこの椅子から立ち上がらずにしまふのが分かつてゐる。併し最後の詞は、なんと云ふ詞にしようか、それはまだ極めてゐない。
最後の言葉を述べて、あの世へ行ったスタニスラウス、生者の時間のスタニスラウス以外の者たちは、集まりまた会話をする。ヨハン爺さんが、給仕をして回る。いや、ヨハン爺さんとて死は免れるものではないから、第二のヨハン爺さんが給仕をする。それらをこれからも彼らは繰り返すだろう、今まで通り、普通に、なんの疑問を抱くこともなく・・

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