青空文庫にいるドイツ人、
ライネル・マリア・リルケの短編が好きだ。森林太郎こと森鴎外の、言葉の切れが読み手を酔わせる。
まず今日とりあげるのは、
「駆落」 ライネル・マリア・リルケ・森林太郎訳
「あなた本当にわたくしを愛して入らつしやつて。」かう云つて娘は返事を待つてゐる。
「なんともかとも言ひやうのない程愛してゐます。」かう云つて少年は、何か言ひさうにしてゐる娘の唇にキスをした。
この少年と少女はどうなったかを語る野暮はしないでおこう。ところで今、私の手元に一冊の辞書がある。
「Little Oxford Dictionary of Quotations」より
Love consists in this,that two solitudes protect and touch and greet each other. (Rainer Maria Rilke)
さて、この少年と少女にもっとも必要だったのは?
protect 、 touch、それとも greet?
少年をエゴイストの烙印を押すことはできないだろう、そして少年の現実を直視した瞬間があったればこそ、この話は面白い方向に見ることができるのだ。少女がその後どうなったか?また少年もどんなふうに生きていったか?また少年の行為を知った少女は次にどんな手をうったであろう。誰も駅で二人をみなかったのだろうか?見たとして少女の父親に告げたとしたら・・どんな仕打ちがまっているかわからない。読み手の数だけ、その後を読み進めることができる面白い作品だと私は思う。

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