ハヴェロック・エリス(Havelock Ellis)が記したある年の三月二十日を山本宣治が紹介している。正確には前の日の出来事。
「三月二十日、前日一匹の猫がカーヂフの町の発電所の配電盤にはひ上つて電線にからみついたので、全市は暗黒の中に陥つた、そして其猫は此一大事業を果して其一命を終へたのだが、其猫がサンヂカリストであつたとも、或は女権主張者であつたとも一向判然しない。併し我々が向つて進みつゝある文明其ものにとつて、此猫の冒険は意味深いものである」。
(山本宣治「
婦人雑誌と猫」)
以降最後まで「」で囲まれた引用文は、同日のものである。城塞化をめざす金持ち、ってどこかで聞いたことあるような。
文明社会に対するあらゆる「猫」、「無茶者」が私でない保証はない。猫の行動を肯定したくなる自分が、心のどこかにいる。
初めおかしく、じわじわと怖くなる(かもしれない)エッセイ。
ハヴェロック・エリスによるエッセイの原文は、Project Gutenbergで読むことができる。
"IMPRESSIONS AND COMMENTS"
http://www.gutenberg.org/etext/8125
該当部分。
_March_ 20.--The other day a cat climbed the switchboard at the electric lighting works of Cardiff, became entangled in the wires, and plunged the city into darkness, giving up his life in this supreme achievement. It is not known that he was either a Syndicalist or a Suffragette. But his adventure is significant for the Civilisation we are moving towards.

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