本日公開は、
「安吾巷談 -野坂中尉と中西伍長 」 坂口 安吾
延々と批判の嵐を巻き起こし、結局は・・・
ーセッカチな理想主義が、何より害毒を流すのである。国家百年の大計などゝいうものを仮定してムリなことをやるのがマチガイのもとだ。人のやる分まで、セッカチにやろうというのが、もっての外で、自分のことを一年ずつやればタクサンだ。
銘々がその職域で、少しでも人の役に立つことをしてあげたいと心がけていれば、マルクス・レーニン主義の実践などより、どれくらい立派だか知れやしない。人の能は仕方がないから、心がけても、人になんにもしてあげられなくても、かまわんのさ。
そしてその次に、自分だけのたのしい生活を、人の邪魔にならないように、最も効果的にたのしむことを生れてきたための日課だと心得ることだ。ー
あら?そうなの。そこへいっちゃうわけ?と肩透かしをくったようになりながらも当たり前のことを簡易な言葉で書かれてあることに、心が解放される。
ソ連時代、ロシア人と接する機会が何度もあったが、誰一人マルクスがどうだとかレーニンがどうだとかを言ったの聞いたことがなかった。手作りのパンを分けてくれたり、ロシア語の勉強を助けくれた。それが、マルクス・レーニン主義を実践しているなどとは誰一人考えてもいなかったと思う。ただパンをいっしょに食べたいから、自分の国の言葉を一所懸命勉強している姿にうれしくなった。主義主張がどうあれ、人と人の付き合いとは、そういった素朴なものだと私は今でも思う。

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