長靴こそは、この冬一番の買い物だったんだなぁと思いながら筆者は、長靴の裏を玄関先でトントン打ち付けていた。「落雁のような」「フラッペのような」「飴のような」雪を体験していたから、時々たたいて雪を取る必要があった。(食物の形容が多いのは今お腹が空いているからである。)
はるか昔、男も他人の家の門で、履物をトントン打ち付けた。
すると門が開いた。女の手が、すうっと。
幸田露伴「
雪たたき」
偶然が男を導く話かと思ったら・・・おや?
手に魅せられてからは一気呵成、ページをめくる手が止まらなかった。頭が謎で一杯になる頃に速度は静かになり、冷静に「中」が始まる。

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