一、生かす工夫絶對に無用
二、絶命後小穴君に知らすべし。絶命前には小穴君を苦しめ并せて世間を騷がす惧れあり。
三、絶命すまで來客には「暑さあたり」と披露すべし
四、下島先生と御相談の上、自殺とするも病殺とするも可。若し自殺と定まりし時には遺書(菊池宛)を菊池に與ふべし。然らざれば、燒き捨てよ。他の遺書(文子)は如何に關らず披見し、出來るだけ意思に從ふやうにせよ。
五、遺物には小穴君の蓬平の蘭を贈るべし。又義敏に松花硯(小硯)を贈るべし。
六、この遺書は直ちに燒棄せよ。
昭和二年七月二十四日、死後懐中より發見されし芥川文子宛の遺書より。(「芥川龍之介全集 第十二巻 」岩波書店刊)
河童忌の朝
夏の陽を抱えし雲に裂け目なし ten

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