「アフリカ製品プロジェクト10年めの選択〜コーヒー農家とアフリカフェ」
タンザニア便り2010-2006
私たちが、アフリカフェを、タンザニアから日本に向けて輸出を始めて、11年目になります。
アフリカフェは、タンザニアで実に40年以上の長きにわたって愛飲されているインスタントコーヒー。原材料ではなく、製品の輸出でタンザニアに外貨を入れて、経済活性化の一翼を担おうというアフリカ製品プロジェクト代表者島岡強の志の元、輸出品第一弾として日本に紹介し始めて以来のことです。
おかげさまで、アフリカフェはこの10年でかなり日本で根付いてきて、アフリカフェじゃないとコーヒーを飲んだ気がしないとおっしゃってくださるような熱烈な愛飲者様も多くなってきています。しかし、缶入りのため、中身が見えず、インスタントコーヒーということがわかりにくい、ふたの部分のアルミ部分が切りにくいなどという理由で販路が限られ、伸び悩んできたという一面もありました。
私たちは、アフリカ製品輸出プロジェクト10年を機に、昨年6月、インスタントコーヒー製造元タニカ社(TANGANYIKA INSTANTO COFFEE COMPANY LTD)の本社と工場がある、タンザニア最北西部、タンガニーカ湖のほとりにあるブコバに行き、コーヒー農園と本社訪問をし、今度は日本のニーズに合わせた形態にしてみようと話し合い、今まで同様、缶入りも販売しながら、日本向けに瓶詰め、詰替え用を作る運びとなりました。
アフリカフェに使用されているインスタントコーヒーは、タニカ本社のあるブコバという地方で栽培されたコーヒーです。
タニカ社は、初代ニエレレ大統領時代、おいしいアフリカのコーヒーを、アフリカ人の食卓にというスローガンのもとに建てられた、当時は東アフリカ唯一のインスタントコーヒー製造会社で、設立以来40年以上にわたって、インスタントコーヒーを造り、タンザニア国内はもちろん、東アフリカをはじめ、ヨーロッパ、中東、そして日本にインスタントコーヒーを輸出しています。
タニカ社のあるブコバ地方は、コーヒーとバナナの里。
主食のバナナやその他の木々をシェイドツリーとして、換金作物であるコーヒーの木を一緒に混栽する自然の土壌形態を壊さないアグロフォレストリー栽培というのが、ブコバでのごく一般的なコーヒー農園のあり方で、大規模なプランテーション形態ではなく、小農の集まりというのも特徴です。
また、ここブコバ地方は、昔からコーヒーノキが自生していた土地で、今のようにコーヒーを飲料として飲む以前から、コーヒーの実をゆでて、乾燥させたものを食べていたという独特の珈琲文化を持つ土地です。
今回のブコバ訪問は、私たちにとって3回目(2000年、2001年に続いて)だったので、1、2回めの訪問時に会ったインスタントコーヒー工場や、コーヒー農家の人たちとの懐かしい再会が多く、話が弾みました。
そして、タニカ社は、地元のコーヒー農家としっかり結びついた形態のインスタントコーヒー製造会社であること、それぞれのコーヒー農家では、農薬も使わず、自然に逆らわない栽培法を続け、丁寧に手積みをし、選別をしている過程も見ることができ、11年目に入るアフリカ製品プロジェクトのシンボル商品としての価値はますます上がっていると確信することができました。
赤いコーヒーの実だけを手摘みし、
天日に干して乾燥させ、
コーヒーの皮を取り除き、
石やごみを丁寧に選別して、スクリーンにかけるところまでは、コーヒー農家と地元のコーヒー協同組合の人々がします
「そこからは、俺たちに任せとけ!」と胸を張るインスタントコーヒー工場の人々
この高い乾燥塔が、タニカ社のシンボル、ここで、美味しいインスタントコーヒーが製造されます。
自分達が栽培したコーヒーを、地元のタニカ社がインスタントコーヒーに加工し、それが製品となって国内外に流通しているということが、ブコバの人々の誇りです。
タニカ社の社員も、ブコバ出身者が9割を占め、親や親せきがコーヒー農家という人がほとんど。
10年前初めてブコバを訪れた時、
「自分達が丹精込めて育てたコーヒーが、息子が務めるタニカ社によってインスタントコーヒーになって、国内外の人々にうまいブコバのコーヒーを飲ませる、それが人生の喜びだね」と語ってくださった人たちの言葉は今でも忘れられないのですが、今回初めてお会いした75歳のマンサブさん(写真下)も、まったく同じことをを語ってくださり、ブコバのコーヒー農家の人々と、インスタントコーヒー製造会社のタニカ社との強いきずなをあらためて感じました。
また、今回のブコバ訪問では、再会したコーヒー農家の人たちの多くが、「長年タニカ社のコーヒーを買い続けてくれてありがとう」という言葉をかけてくれたのが、とても心に残りました。
感謝の言葉が嬉しかったということではありません。
もし、タニカ社が、地元民をないがしろにして、自分の会社の利益だけを追求するような会社だったら、絶対にコーヒー農民からこんな言葉は出ないだろうということがはっきり伝わり、タニカ社と一緒に歩んできた10年は間違っていなかったという確信を得られたことがとても嬉しかったのです。
そんなブコバの人々の誇りである、タニカ社の美味しいインスタントコーヒーを、もっともっと広めたい、広めるにはどうしたらいいか、そんな気持ちを互いにぶつけ合い、タニカ社とバラカ社共同で、新しい形態のアフリカフェ瓶入り案を練ってきたというわけです。
左から、タニカ社:イシャンシャ社長、カレガ会長、バラカ社:島岡強代表、由美子
瓶のラベルは、タンザニアの代表アート、「ティンガティンガ」から選ぼうということになり、ティンガティンガ村のアーティスト達にアフリカフェのデザイン画を描いてもらい、タンザニア、アフリカのコーヒーであることがわかるようにという点から吟味し、最終的にサランゲのマサイとルーカスのバオバブを採用しましたが、いかがでしょうか。
マサイを描いたサランゲ
1999年より始動したアフリカ製品輸出プロジェクト、初めて日本にアフリカフェが到着したのが2000年の春。
最初の輸出品目は、アフリカフェだけでしたが、この10年の間に、紅茶「アフリカンプライド」、タンザニア綿でできている生活綿布「カンガ」、綿布地「キテンゲ」、そして、プロモートする範囲をアート作品まで広げ、ティンガティンガアートをいろいろな方面から紹介するようにもなりました。タンザニア本土のものだけではなく、2009年には、ザンジバルの名産である香辛料を使って、TZOP社と、ザンジバルMIXスパイスを共同開発し、販売を開始。今年2010年春からは、同じくザンジバルのマチューイ村にある小さな織物工場から織りだされる綿製ショールの販売を開始。
そして、2009年よりTANICA社と共同で瓶入りアフリカフェ製品化を進め、2010年新発売となったわけです。
アフリカ製品プロジェクトで扱う製品は、アフリカのものだからこれぐらいで、という言い訳をせずに、日本市場でも堂々と対等の貿易ができる製品の質であることを求めているので、日々品質管理の上でタンザニアの人々と話し合いを重ね、共に対策を練りながら進めています。
初めてのブコバ訪問の時は、まだ定植したばかりだった小さなコーヒーの木もすっかり大きくなって、たわわに実をつけていました。この10年に大きく育ったのは、コーヒーの木だけではありません。10年前に初めて会った各農家の子たちも、すっかり大きくなっていて、年月の経過を感じました。
今回も、学校から楽しそうに帰ってきたコーヒー農家の子供たちに会いました。この子たちのこれからの成長も楽しみです。ブコバに行くと、子供達の笑顔と、植えたばかりのコーヒーの木の未来が重なって見えてきます。
私たちバラカ(タンザニア&ジャパン)は、これからも、タンザニアの人たちと一緒に、アフリカ製品輸出プロジェクトを長く継続し、いい方向に伸ばしていくため、さらに奮闘努力していく所存です。新発売の瓶入りアフリカフェをはじめ、バラカのアフリカ製品を、これからも、どうぞよろしくお願いします。
by島岡 由美子

36