シナモン(cinnamon)は、やさしくほのかな甘みがあり、料理にまろやかな風味を加えます。
古くから薬用としても用いられ、現在でも民間万能薬として発熱、悪心、嘔吐などに広く利用されています。
シナモンが持つ甘美な香りは、古代から愛をかき立て、深い愛情を示すものとして、王侯貴族の最高の贈り物とされており、また、東洋でも、シナモンは寺院で用いるなど、昔から貴重品として扱われていました。
・・・などど蘊蓄を語らなくても、日本でもシナモンはお馴染みのスパイスですね。
でも、シナモンの木は見たことのない方が多いのでは?
今日は、シナモンの森へ散策に出かけましょう。
ここは、ザンジバルにあるシナモンの森。
森の中は、シナモンの木を中心に、いろいろな木や作物がが共生しています。
(*ザンジバルの農園は、どこも地球に優しいアグロフォレストリー。アグロフォレストリーというのは、単一栽培のモノカルチャーとは正反対で、農園の中にあれこれと複数の農作物を植える方法です。
互いに日陰を作って地熱を下げたり、熱射に弱い作物を守る役割をするためのシェイドツリー(日陰用の木)として植えられていたりという具合でちゃんとそれぞれ意味があり、作物や木によって根の伸び方が違うので、複数の樹木や作物を植えておけば、一定の深さの地面からだけ養分を吸い取って、土地を痩せさせてしまうことがありません。
また、樹木や作物によってつく虫も違います。混栽することで、それぞれが互いに害虫に対するバリアーの役目も担っているということまで含めて、土地の自然な循環体系を守る、いいことづくめのアグロフォレストリーシステムそのものになっているのです)
シナモンの森を案内して下さったのは、マスーディさん36歳。
シナモンと一緒に、クローブ、キャッサバ、パイナップル、ジャックフルーツ、パパイアなどなど、たくさんの樹木を育てています。
木漏れ日が美しい森の中、シナモンの木には、紫に輝く実がたくさん成っており、ふと下を見ると、枯草の中から、つやつやの緑色をした美しい葉っぱとともにたくさん芽吹いていました。
シナモンは、こうして芽を出してから、約3年でスパイスとして使える大きさに育つそうです。
途中で真っ赤な実をつけたショキショキ(ライブータン)の木が!
この日はとても暑い日で、のどがからからに渇いていたので、甘い果汁たっぷりのショキショキが食べたいなと思っていたら、マスーディさんが持っていたパンガ(大型ナイフ)で枝ごと切ってくれて、歩きながらおいしくいただきました☆
こういう楽しみも、複数の樹木が共生するアグロフォレストリー栽培ならではです。
シナモンの木で、スパイスとして使われるのは、幹や枝の樹皮の部分。
葉はエッセンシャルオイルに使われるそうです。
幹の小枝や葉を落とし、まずは、ナイフで皮の表面をこそげ落とします。
芯の周りにある樹皮部分だけをはぎとって、天日で乾燥させてから料理やお菓子、薬用に使います。
シナモンの木は、再生力も強く、伐採した切り株から新しい幹が生え、これもまた3年ほどでスパイスとして使えるほどの大きさに伸びるんですよ。
ザンジバルのシナモンは、ほとんどが自生状態なので、実が自然に落ちて、芽吹いてくる自然のサイクルを見守るだけの農法で、シナモンは手のかからない木だよと農家の人は口をそろえて言っていました。
シナモンが生い茂る森の中は、いろいろな樹木の香りがしてとっても爽やか。上を見上げれば、つややかな葉を茂らせるシナモンの樹木から木漏れ日が差し、下を見れば、枯草が堆肥となった肥えた土に、自然に落ちた実があちこちに美しく芽吹いており、シナモンの森散策は、とってもフレッシュな気分になるひと時でした。

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