先週の土曜日にイギリス・アスコット競馬場で行われた「キングジョージ6世&クイーンエリザベス・ダイアモンド・ステークス」は現役最強の呼び声が高いフランスの強豪ハリケーンランがドバイワールドカップの覇者エレクトロキューショニスト、ドバイシーマクラシックの覇者ハーツクライを内から差し切り、父モンジューに続く親子制覇を成し遂げた。今回はこのレースを振り返ってみたい。
”キングジョージ”は欧州の中では歴史が比較的浅いレースだが、英王室がロイヤルアスコット開催の目玉、つまり最強馬決定戦として設立した由緒あるレース。フランスの凱旋門賞も最強馬決定戦を謳うレースとしてはそれ程古い歴史をもつものではない。”キングジョージ”の行われるアスコット競馬場は「ASCOT」の名が世界に轟いているようにとても有名な場所。欧州の競馬場は社交の場としても知られているがASCOTは英王室所有という格があり、一際華やかだ。古い映画になるがオードリー・ヘプバーンが主演した「マイ・フェア・レディ」にも登場する。
さて、今年の”キングジョージ”の注目は戦前から3頭に絞られていた。昨年の欧州チャンピオン・ハリケーンラン、今年のドバイワールドカップを制したゴドルフィンのエレクトロキューショニスト、そして日本からは有馬記念でディープインパクトに土をつけたハーツクライ。英国の各ブックメーカーの予想もこの3頭の順で人気が割れていて、特にハリケーンランもエレクトロキューショニストも前走敗れていた為、ハーツクライの評価は高まった。これにはもう一つ要因があり、アスコット競馬場はスタンド、馬場を昨年1年をかけて400億円を投じ改修している。この馬場改修によりそれまで起伏の激しかったコースがかなり平坦な路面になったようで、馬場も高速化されハーツクライ向きではないかと考えられたからだ。そしてレースが近づくに連れ3強に対して回避する馬が続出し、結局6頭立てのレースとなった。日本では考えられないが、特に欧州では出走したという名誉よりも実を取る。
さて、レーススタート。全馬スムーズにゲートを出ると、予想通りゴドルフィンのペースメーカー・チェリーミックスがハナを切る。チェリーは凱旋門賞で2着になったこともある馬だ。ここでゴドルフィンについて説明するが、中東UAEを構成する首長国の1つ、ドバイのモハメド国王が司る世界各国の競馬をリードするグループである。国王が皇太子時代に英国留学をされた時にサラブレッドに魅せられたことがキッカケだったと聞いているが、自国にも巨大な競馬場を築いてしまうくらいだからオイルマネー恐るべしである。今年のドバイワールドカップデイに行われたG2ゴドルフィンマイルを制した日本のユートピアがこのレースの後ゴドルフィンへトレードされている。また、昨今は日本でも活発に活動していてゴドルフィングループの日本法人がJRAへ馬主申請をしている。これは今年も却下されたが、既に地方競馬では活動しており、昨年の東京ダービーを制したシーチャリオットなどは同グループの所有であるし、北海道では馬産活動も始めている。とにかく一般の馬主には絶対に真似のできないことをやっているのがゴドルフィンである。
さて、レースに戻るとチェリーミックスがハリケーンラン、エレクトロキューショニスト、ハーツクライを従えて最終コーナーの手前へ、ここで2番手にエレクトロが上がり、ハリケーンランは鞍上のスミヨン騎手の手が動くもやや後退。その外から満を持してハーツクライがエレクトロに並びかけ直線へ。エレクトロの鞍上フランキー・デットーリ騎手もハーツクライを相手と定め馬体をこすり合わせるように競り合う。残り200m、ハーツクライが半馬身ほど抜け出した時、最内から一陣の風となってハリケーンランが飛び出してきた。先に仕掛けていた2頭には余力はなく、更にハーツクライには久々が少々応えたか、エレクトロに半馬身差離された所がゴール。結果としては先頭から1馬身差の3着と敗れたハーツクライだったが、戦いようによっては勝てたかもしれないレースだったことは見ていた方には感じることができたと思う。しかしながらまた世界最強と言われる連中の底力も見せつけられたレースでもありました。
この秋、私たちはこれまでの日本競馬の、いや日本の競馬ファンの歴史の中で見たことのない光景を目の当たりにすることができるでしょう。その時にはハリケーンランやエレクトロキューショニスト、シロッコ等が平伏し、世界最高の舞台で今度こそ日本生まれのスーパーホースが世界の目を釘付けにするのです。あと2ヶ月、期待は膨らむばかりです。

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