眼が覚める。
ベッドの横の椅子に膝を抱えて男の子が座っていた。
その男の子が言う。
「そろそろ折り返す?」と。
僕は男の子に聞き返す。
「折り返すって何を?」と。
男の子が僕に答える。
「人生をさ。…勿論」
男の子「…あのね。特別にあなたの人生を折り返してあげようと思って僕は来たんだよ」
僕「…よく話が見えないんだけど、人生を折り返すとどうなるワケ?」
男の子「今まで日々歳を取ってきたんだから、これからは日一日と若返って行くよ。勿論」
僕「そうするとどうなるの?」
男の子「やがて子供になるよね、勿論。それで、あなたが今まで生きてきた日々が再び経過した後にこの世からいなくなるよ、勿論」
僕「そっか。…素晴らしい提案をありがとうね。…あのさぁ。質問があるんだけど、いい?」
男の子「いいよ。勿論」
僕「どっかいい案配のところで再び人生を折り返したり出来ないんだろうか?(笑)」
男の子「それは無理」
僕「どうして?」
男の子「人生はマラソンだから。マラソンに折り返し点は一度だけでしょ?」
僕「なんだか、あんまり納得出来ない理由だな…」
男の子「で、どうする?折り返す?それとも折り返さない?」
僕「ここで人生を折り返した場合、僕は今から48年後の誕生日には必ず死ぬんだな」
男の子「そう。でもそれはかっなり先の話だよ。勿論」
僕「でもさ、死ぬ日は決まってて僕はそれを知っている。知っていたら僕はずっとそれを意識して生きなきゃいけないよね」
男の子「馬鹿だなぁ。人はいつか必ず死ぬ。寿命だって大体は決まっている。だったら、違いはハッキリしているかと漠然としているかだけじゃないか」
僕「なるほどね…」
男の子「折り返すにしろ、折り返さないにしろ、残された時間をもっと意識した方がいいよ。時間は限られている。なすべきことは何なのか」
僕「貴重な意見ありがとう。今度よく考えてみるよ」
僕「…若返ってだんだん子供になる。けどその時に僕の周りには誰もいなくなっちゃうんだろうなぁ」
男の子「それはそうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。分かんないよ」
僕「…」
男の子「で、どうするのさ?」
僕「う〜ん。…あのさぁ、もう一個だけ質問してもいい?」
男の子「いいよ。勿論」
僕「キミのその“勿論”って言うのは口癖なの?」
目覚まし時計が鳴る。
そこで、僕は眼が覚めてしまった。
幼い頃理屈ぽかった僕は話の最後に“勿論”を付けるのが癖だったなぁ、と思い出す。
どっか別次元に折り返した僕がいて、違う価値観を持って生きているのだろうか?
それは
そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
分かんないよ。

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