4.おわりに
20世紀初頭の世界の人口は15億人といわれた。それが1999年10月に60億人を突破し、いま(2004年7月現在)、63.7億人を数えるほどに膨れ上がった。
国連人口基金は、2004年版『世界人口白書』を発表(2004年9月15日)したが、2050年の世界人口は凡そ89億人に達するであろうと推計している1)。その大部分の人口増はアジア地域に集中し、とくに中国、インド、パキスタンそしてバングラディシュの4カ国だけでも、増加する人口25億人の33%の相当する約8億3,000万人も増えると予想されている。21世紀最大の人口大国は、13億9,520万人の中国に代ってインドがトップ(2050年の推計人口、15億3,140万人)の座につくものと推測されている2)。
とくに、インド、パキスタン等をはじめ多くの 発展途上のどの国でも、爆発的な人口増大とともに工業化も急速に進み、環境問題は一層深刻化している。
一方、国連が進める貧困削減・脱貧困化対策が進められる中で、一部の途上国のでは大型家電製品、マイカー等の耐久消費財の普及が著しく、家計を含む民生部門におけるエネルギー消費が急増し、いまや一部の極貧国を別とすれば、家計消費において世界中が先進国に近似した生活構造を持つようになった。
1990年以降、わが国でも民生部門のエネルギー消費の伸びが著しい。とくに、自家用乗用車による二酸化炭素の排出量は、家庭用マイカーと業務用自家用車合わせて、1990年度比で99年は41.6%も増加した。それ以外にも、民生部門(家計系及び業務系含める)で使われているエネルギー消費の最終エネルギー消費に占める割合は、何と全体の40%にも達している。
確かに、この数値を家計部門のエネルギー消費に限定して表わしているわけではない。したがって、一概に「消費部門」だからといっても、すべてが家計の消費行動による結果を意味しているわけではないからである。例えば、「自家用車」といっても、そのすべてが家庭の「自家用車(マイカー)」を指しているわけではない。
自家用車には、企業や公共部門における「自家用車」も含まれているから、家庭用マイカーで使われる消費エネルギーの大きさは、全体の約6%であり、2002年現在の日本の家計世帯4、864万世帯の消費エネルギーは全体の13%で、合計しても20%弱に過ぎないのである。
わが国には635万社にものぼる大小企業及び大所帯の公共部門が存在しており、併せると約80%を占めるエネルギーを消費をしている。
一方、製造業や建設業等の産業分門におけるエネルギー消費がここ30年間ほぼ横ばい状態を維持しているのと比較して考えたとき、消費者の日常の生活行動に関連して生じるエネルギー消費は、1990年を基準に、2002年までに28.8%増加している3)。その理由の一つは、一般世帯総数の増加(1995年の4,390万世帯から2000年には4,640万7,000世帯)によるものと推察される。その他にも家計におけるエネルギー消費の増加をもたらすライフスタイルへの変化も考えられる。
その背景に、日本の未婚率は30%に達しており、また晩婚化も進んでいる。当然とはいえ、年々出生率が低下している。2003年度の合計特殊出生率も1.29にまで下がっている。その結果、家計における高齢化は一段と高まり、高福祉・高医療そして高環境配慮型商品志向が進む中で、新しい家計消費分野でのエネルギー消費も増大すると考えられる。
その一連の社会変化も一方では、消費者の行動それ自体が、新たな環境負荷を招くことになる可能性もあるように思われる。
しかし、下記の表Z−3からも明かなのように、「環境保護に対する消費者の意識と行動」(『読売ADリポートOjO(2001.5)』)に依拠するならば、今日の消費者の90%余りが、環境への配慮を重視している商品・サービス、すなわち「環境に『優しそう』な商品の購入」に関心を持っていることが解かる。
同時に、消費者の97.1%が「環境問題に積極的に取り組む企業には好感がもてる」と答えている。しかも、この調査項目に対して、(自分の行動が)それに「あてはまる」と回答した消費者もまた、全項目の中で最も高い68.4%に達しているのである4)。
表Z−3 環境に配慮した消費者の購買行動
消費者の商品・サービス選択基準 A B C A+B
(記号は各々、A:「(自分の行動が)あてはまる」を、B:「(自分の行動が)ややあてはまる」を、そしてC:「(自分の行動が)あてはまらない」を表わしている。)
1.「環境に優しそう」と考えて
商品を購入する A:36.2 B:52.8 C:10.9 A+B:89.0
2.「環境に悪そう」と考えて
商品の購入をやめることがある A:38.8 B:48.0 C:12.8 A+B:86.8
3.多少値段が高くても環境に
よい商品を選んで購入する A:20.5 B:54.9 C:24.2 A+B:75.4
4.環境への配慮を重視している
商品に関心がある A:46.3 B:47.0 C: 6.3 A+B:93.3
5.環境問題に積極的に取り組む
企業には好感がもてる A:68.4 B:28.7 C: 2.7 A+B:97.1
出所:『読売ADリポートOjO(2001.5)』(
http://www.ojo.ne.jp/ojo/02number/200105/)「環境保護に対する消費者の意識と行動」)に依拠して作成した。なお、資料は、2004年8月3日利用(2004年9月20日確認検索)。
最後に、以上の観点を踏まえて考えたとき、「望ましいグリーン・コンシューマー」として、消費行動を行うことは、「意識」の上では容易でも、実際の家庭内において「行動」に移すことの難しさを改めて知ることができる。それ故、前々節(3)「消費者の環境意識と行動の間のギャップ」において言及してきたように、消費者の「環境意識」と「環境に配慮した行動」の間には常に大きなギャップが生む要因が内在しているものと考えられるのである。これまでの生産と消費のパターンを見直し、環境への負荷の少ない資源、エネルギー等の開そして積極的なグリーン購入を進めることが可能な環境市場の構築が待たれるのである。
(注)
1)2004『世界人口白書』は「発展途上国の約3億3500万組のカップルが、希望する(避妊など)家族計画サービスを受けられないでいる」ことについても言及し、世界の貧困と環境破壊の原点が急増する人口にある点を指摘している。
2)「世界人口63.7億人」『読売新聞』(朝)2004年9月16日、1頁。
3) 浅岡美恵「脱温暖化に向けて日本にできること、すべきこと」『世界(特集)』2004年10月(第731号)、103頁。
4) 読売ADリポートOjO(http://www.ojo.ne.jp/ojo/02number/200105/)「環境保護に対する消費者の意識と行動」、2004年8月3日(2004年9月20日確認検索)利用。
≪参考文献(資料≫
(1)内閣府大臣官房政府広報室(2004)「国民生活に関する世論調査」・『世論調査』、平成16年6月。
(2)内閣府大臣官房政府広報室(2001)「循環型社会の形成に関する世論調査」・『世論調査』、平成13年7月。
(3)内閣府大臣官房政府広報室(2001)「地球温暖化防止とライフスタイルに関する世論調査」・『世論調査』、平成13年7月。
(4) 中本博皓・陳海権(2001)「消費者の環境意識と流通産業の環境戦略」・『日本消費経済学会年報(2000年度)』、2001年3月。
(5)環境省(2002)「社会経済のグリーン化メカニズムの構築に向けた取組」・『環境白書』(平成14年版)。
(6(財)生命保険文化センター(1996)『第4回日本人の生活価値観調査(1996年)』、平成8年月。
(7)(財)生命保険文化センター(2002)『生活者の価値観に関する調査』、平成14年3月。
(8)武川正吾(2002)「生活不満と生活不安」・『JILI FORUM:(特集T)生活者の価値観は変わったか』(No.11)・(財)生命保険文化センター、2002年4月。
(9)電通(2002)(http://www.dentsu.co.jp/trendbox/topics/2002/020510.html)2002「生活者の環境意識と行動」期間(2002年12月6−16日)、2004年7月30日利用、2004年9月20日確認検索。
(10)織田博嗣・桜井仁(2002)「循環型社会形成に向けたグリーン購入促進のための視座」及び(その2)、SRIC REPORT、2002 Vol.7 NO.7及び UFJ Institute REPORT 2002.6Vol.Vol. No.3。
(11)船橋晴俊(2002)「グリーンコンシューマー運動の類型と普及への課題」『月刊国民生活』・国民生活センター、2002年3月。
(12)緑川芳樹(2002)「環境を考えた消費者の商品選択はどうあるべきか」『月刊国民生活』・国民生活センター、2002年3月。
(13)呉世煌(2004)「グリーン・コンシューマーの理想像=環境志向型消費者」中京大学社会科学研究所プロジェクト<消費者問題と消費者被害救済の研究>編『消費者問題と消費者保護』(第1章2−(3))・成文堂、2004年3月、15頁。
(14)通商産業省(現経済産業省)編(1993)『地球再生14の提言』・通商産業調会、1993年4月。
(15)読売ADリポートOjO(2001)『環境保護に対する消費者の意識と行動』、2001年5月。
(16)「気候大変動、温暖化は何を引き起こしているか」・『世界(特集)』、2004年10月(第731号)。