2011/11/21

要請書−日本脱カルト協会  オウム・カルト・犯罪

本日、日本脱カルト協会(JSCPR)が出した要請書は、下記のとおりです。
参考までに。
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             要  請  書   

 最高裁判所は、本日、オウム真理教の元メンバー遠藤誠一被告の弁護側上告を棄却した。これにより、一連のオウム事件にて、教祖である松本智津夫死刑囚以外の元メンバー12名の死刑判決もすべて確定することとなる。

 12名は、言うまでもなく地下鉄サリン事件、松本サリン事件、坂本弁護士一家殺人事件を初め多くの極悪非道の犯罪にそれぞれにかかわったものであり、化学兵器サリンまで使った無差別大量殺人まで起こして世界的にも多大な脅威となったことからしても、その刑事責任は実に重い。

 しかし、当協会は、最高裁判所に対して上記の各上告棄却に抗議し、法務大臣においてこれら12名への死刑を決して執行せず、刑を減軽する恩赦も検討するよう、強く要請する。

 すなわち、仮に死刑制度の存続を前提としてであっても、かようなカルト性の極めて高い集団での絶対的指導者であるグルの指示による犯罪について命を奪う死刑を言い渡し、さらに執行することは、まったく正しくない。

 当協会会員らの少なからずは、今回の遠藤誠一被告の裁判を初め、一連のオウム裁判に次々と証人また鑑定人として出頭し、その一環として何度も本人に面談し、時には裁判所の要請により拘置所にて、ご家族の要請により刑務所の了解を得てカウンセリングを重ねてきた。また当協会会員らの数人は、これら死刑囚の起こした事件の被害者でもあり、文字どおり命をかけてオウム真理教と闘い続けてきた者である。

 その中で改めて確信したことは、12名のいずれもが、松本死刑囚と同人が作ったシステムの中で、睡眠不足、栄養不足そして情報不足の中、それまで各人がもっていたビリーフシステムを、巧妙な心理操作の上で「グル=最終解脱者真理の御魂最聖麻原彰晃尊師に絶対的に服従する」「グルの指示で人を殺すのは救済活動であり、良いことだ」などと、入れ替えられたうえでの事件だったということであった。

 この重大な事実は、事件のあまりの極悪非道さによってか、井上被告に対する一審無期懲役判決を別とすればほとんど主文に反映していないが、その直接撒布したサリンによって8人もが死亡した林泰男被告に対する一審判決の判示中に「およそ師を誤まるほど不幸なことはなく、この意味において、被告人もまた、不幸かつ不運であったと言える」とあることから分かるように、事件の真相を知れば知るほど、明確に分かってくることである。
さらに重大なことには、1994年初夏以降の事件は、教団で儀式という設定で使用されたLSDや覚せい剤により、現実感覚をより深く失わさせられている影響が認められるのに、この薬物事件が公訴事実から取り下げられてしまったからか、どの裁判でもまともに分析・検討されたうえでの判決となっておらず、多大な問題である。

 実際、これらは取調官こそ理解していたものであり、1995年初夏、東京地方検察庁次席検事が「マインド・コントロールの影響で取り調べは困難を極めた」と述べたことを軽視してはならない。実行犯らは、実態としてグル麻原の手足に過ぎなかったのであり、思考を停止した状態だったと評価するほかないのである。

 当協会会員らのもとには、今も、破壊的カルトに絡めとられた家族らの相談が引きもきらない。オウム事件の実行犯もまったく人ごとではなく、誰の子どもでも、またどこの家族がその立場になっても不思議ではないことを実感する。

 また、諸外国の同じ問題意識を持つ学者・カウンセラーとの集まりや、外国のマスメディアから取材のとき真に感じることは、一連のオウム裁判は、破壊的カルト集団が犯した事件に対する審理として、殆ど世界で初めての裁判であり、世界中が注目してきたことである。

 かようなとき、12名に対して命を奪う死刑を言い渡し、さらに執行することは、日本の司法と司法行政が破壊的カルト集団の本質を理解していないことを世界に示すものとなってしまうものであり、日本の歴史に重大な禍根を残す。

 12名は、オウム真理教と自己を死ぬまで分析・反芻しつつ、自らの罪を負っていかせるべきである。未だグル麻原の桎梏を離れきれていない被告人もいるが、彼らに対しても息の長い周囲からの働きかけ、そして命の重要性を現実感もって感じ続けるための拘置所における措置が必要である。そして、12名の、その後の心情の変化を折に触れて公表させていくことが必要である。

 それらによってこそ、未だ信者の残る「オウム真理教」も真に崩壊し、かつ破壊的カルト集団がどのような心理的機序により違法行為を重ねるのか、また殺人まで犯すのかを明確にでき、類似の集団による同様の事態を防止することにも資することができる。

 オウム事件は、日本史上、先例のない刑事事件であって、先例のない体制での大規模かつ継続した捜査、先例のない捜査手法、刑事裁判、先例のないいくつかの法律を制定するなどされてきた。12名の死刑判決が確定したとしても、先例のない形での事後処理としてそれを執行しないことこそ、正しい対応であると確信する。

 以上の理由により、私たちは、最高裁判所に対して12名の上告棄却に強く抗議し、法務大臣においては決して執行せず、刑を減軽する恩赦も検討するよう、強く要請する。

2011年11月21日
    日 本 脱 カ ル ト 協 会
       代表理事 西 田 公 昭

最 高 裁 判 所     御 中
法   務   省     御 中

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(当協会は、心理学者、聖職者、臨床心理士、弁護士、精神科医、宗教社会学者、カウンセラーそして「議論ある団体」の元メンバーやご家族らで構成されている180人ほどのネットワークである。破壊的カルトの諸問題、カルトに関わる個人および家族へのカウンセリング経験についての交流およびカルト予防策や社会復帰策等の研究をおこない、その成果を発展・普及させることを目的としている。設立1995年6月、旧称日本脱カルト研究会) 
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