10月6日7日付けの沖縄タイムスに掲載されたようです。
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[教科書検定への異議](上) 林博史
文科省の意見撤回を/記述復活のみでは禍根残す
日本軍の強制を削除させた教科書検定に対する沖縄県民の怒りの前に、政府はようやく対応せざるをえなくなってきた。その中で浮上してきたのが、検定そのものは認めたうえで、教科書会社から記述の訂正があった場合には「真摯に対応する」として、元の記述の表現を若干変えれば、事実上、同趣旨の記述の復活を認めるという方法である。
この方法では、日本軍の強制性を否定した検定意見はそのまま無傷で残り、将来にわたって禍根を残すであろう。
文部科学省が教科書執筆者たちを呼び出して検定意見を通知した方法を見ると、検定意見が執筆者に説明され、それに対して執筆者で対応を協議し、どのように修正するかを決めて回答する。この手続きを日本史教科書であれば、古代から現在まですべてを二時間で終えなければならない。
つまり、持ち帰って資料や研究に再度あたることが許されず、その場で対応を決定しなければならない。
複数の教科書執筆者の話によると、この席で文科省の調査官は「最新の成果といっていい林博史先生の『沖縄戦と民衆』を見ても、軍の命令があったというような記述はない」などと言って、私の著書『沖縄戦と民衆』を例に挙げて、日本軍の強制を削除させる根拠にしたという。
執筆者たちは結局、その場で検定意見を受け入れざるを得なかった。そこであくまで拒否すれば検定不合格となり、教科書作成のそれまでの努力がふいになるからである。
ある執筆者は帰宅後、私のその著書を取り出してみたところ、「いずれも日本軍の強制と誘導が大きな役割を果たしており」「日本軍の存在が決定的な役割を果たしている」という結論であることを確認し、「無念」の思いにとらわれたと語っている。
私は著書の中で一つの章を「集団自決」にあて、その中で「日本軍や戦争体制によって強制された死であり、日本軍によって殺されたと言っても妥当であると考える」との認識を示したうえで各地域の分析をおこない、渡嘉敷島のケースでは「軍が手榴弾を事前に与え、『自決』を命じていたこと」を指摘している。
座間味島のケースでも、日本兵があらかじめ島民にいざという場合には自決するように言って配布した証言を紹介している。「集団自決」がなされるにあたって「軍からの明示の自決命令はなかったが」というように、同書執筆時点(刊行は二〇〇一年十二月であり、執筆は前年からおこなった)で確認できた証言などから、いま自決せよというような命令は出されていなかったと思われたので、そうした認識は示している。その個所だけが文科省に利用されてしまった。
しかし、私の著書では、あらかじめ自決するように手榴弾が配布されていたことや、捕虜になることは恥だと教育されていたこと、米軍に捕まるとひどい目にあわされて殺されると叩き込まれていたこと、住民が「自決」を決意したきっかけが「軍命令」であったことなども指摘し、さらに日本軍がいなかった島々では米軍が上陸しても「集団自決」がおきていないことを検証し、結論として先に引用した部分のほかに「『集団自決』は文字どおりの『自決』ではなく、日本軍による強制と誘導によるものであることは、『集団自決』が起こらなかったところと比較したとき、いっそう明確になる」と断言しているのである。
(関東学院大学教授)10がつ6日朝刊2面
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[教科書検定への異議](下) 林博史
文科省の手法 詐欺的/歪曲検定ただちに撤回を
渡嘉敷島や座間味島については、この間、新しい証言が次々に出てきており、私の著書の記述を書き改めなければならないと痛感しているが、しかし、日本軍の強制と誘導が「集団自決」を引き起こしたことは、それまでに明らかにされていた証言などからも明白であり、私の著書のみならず、沖縄戦に関するすべての研究が同じ結論に達していたものだった。
最近、新しい証言が出てきたから、それを理由にして教科書会社からの正誤訂正を認めるという話が出ているようだが、そうしたやり方は、これまで長年、沖縄の人々の努力によって積み重ねられてきた沖縄戦の調査と研究をまったく否定するもので、決して認めることはできない。
教科書調査官が執筆者たちに言い渡した検定意見は、明らかに虚偽に基づいて執筆者を欺いたとしか言いようがない。資料も文献もない文科省の一室にいた執筆者たちは、調査官の意見に反論する材料も機会も与えられないまま、その検定意見を認めて書き換えるしかなかった。
執筆者たちが検定意見を持ち帰って私の著書を確認すれば、調査官が根拠にしている研究では「日本軍の強制と誘導」によると結論付けているではないか、そうであれば、日本軍によって「集団自決」を強いられた、あるいは「集団自決」に追い込まれたという記述は、この研究成果を正しく反映した記述ではないか、という反論を行うことができただろう。しかしその機会は与えられなかった。
こんなやり方は詐欺と非難されても仕方がないのではないか。
文科省は、日本軍の強制を否定するような研究がまったくないので、仕方なく、全体の文脈から切り離して私の著書から一文だけを抜き出し、結論とは正反対の主張の根拠に使ったのである。
現在の検定意見の言い渡しの方法が、そうした詐欺的手法を可能にしたのであり、検定制度そのものの見直しも必要である。
文科省は、こうした手法で執筆者たちを騙し、検定意見を押し付けたのである。
このようなやり方のどこが合法的なのだろうか。これが教育に責任を負う官庁が行うことなのだろうか。
こうした詐欺のような手法で押し付けられた検定意見をそのままにして、正誤訂正でごまかそうとすることは決して認めるわけにはいかない。
文科省は、著作を歪曲し間違った検定をおこなったことを認め、検定意見をただちに撤回すべきである。
(関東学院大学教授)10月7日朝刊2面
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ttp://www32.ocn.ne.jp/~modernh/index.html
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☆詐欺です。
#参考にさせて頂いた記事など
・
[教科書検定への異議]/林博史【沖縄タイムス】 ・・・ どこへ行く、日本
・
『世界』11月号から:教科書検定でのチームアベ暗躍 ・・・ Like a rolling bean