road to truth

ひとりの人間の「真実の生き方」への模索の記録

 
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8月6日に

あなたたち
泣いても涙のでどころのない
わめいても言葉になる唇のない
もがこうにもつかむ手指の皮膚のない
あなたたち
 
血とあぶら汗と淋巴液とにまみれた四肢をばたつかせ
糸のように塞いだ眼をしろく光らせ
あおぶくれた腹にわずかに下着のゴム紐だけをとどめ
恥しいところさえはじることをできなくさせられたあなたたちが
ああみんなさきほどまでは愛らしい
女学生だったことを
たれがほんとうと思えよう
 
焼け爛れたヒロシマの
うす暗くゆらめく焔のなかから
あなたでなくなったあなたたちが
つぎつぎととび出し這い出し
この草地にたどりついて
ちりちりのラカン頭を苦悶の埃に埋める
 
何故こんな目に遭わねばならぬのか
何の為に
なんのために
そしてあなたたちは
すでに自分がどんなすがたで
にんげんから遠いものにされはてて
しまっているかを知らない
 
ただ思っている
あなたたちはおもっている
今朝がたまでの父を母を弟を妹を
(いま逢ったってたれがあなたとしりえよう)
そして眠り起きごはんをたべた家のことを
(一瞬に垣根の花はちぎれいまは灰の跡さえわからない)
 
おもっているおもっている
つぎつぎと動かなくなる同類のあいだにはさまって
おもっている
かつて娘だった
にんげんのむすめだった日を

(仮繃帯所にて・峠三吉)


つぶやきで紹介した和合亮一は、原発事故の渦中にあって涙を流しながら「行きつくところは涙」と書いた。
峠三吉は原爆詩集「仮繃帯所にて」冒頭で被爆者の状況を「泣いても涙の出所がない」と表現した。
和合さんは被曝してから、峠の詩を何度も何度も読み返しているという。
僕もまた、峠三吉の詩に、文学とか芸術を越えるものを感じ、圧倒される。

2013年、68年目の8月6日に・・
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投稿者:eudaimonia
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