翌日も空間の余韻が残っている。そんな邦画はいつ以来だろう。近年「邦画が好調」とか言われているが、そうした恥ずかしい流れとは全く別の体験となった。映画ばかり見ている奴に映画は作れない、演劇鑑賞が大好きな奴に演劇は作れない。というのが僕の持論だが、やはりな、と思わされる。
▼「お見事!」
評価:★★★★☆
本作が松本人志の手によるものだと知らず、映画館に入る人はまずいないだろう。その上で期待するよりも遥かに多くのものが、この映画には詰まっている。
だからなのか、上映後の客席には戸惑いのようなものが漂っている。本作は、誰にでもはっきりと分かる形、分かりやすい形で「こういうことだったんですよ」とは発表しない。『おくりびと』のようなまとめ方とは一線を画したそれが、実に心地いい。
近年、設定にばかりこだわる観客が増えている。設定でしか作品を消化できない、と言い換えてもいい。オフィシャルなもの、解釈が出るまで安心できない。答え合わせを待ってしまう。
理屈でなく、心で受け止めればいい。本作はぽかんとするような映画では断じてない。
映画館で体験したい大抵のことが、本作には入っている。そして恐らく、監督がいやだと思うことは入っていない。松本人志の顔がアップになると、綺麗だとは思わない。しかし、のっぺりとしたCGのような質感よりずっといい。
そういう感覚で作られているから、監督一流のヒューマニズムやグローバリズムも、すんなり受け入れることができる。
映画館という空間をきちんと意識した画作りも、『大日本人』を見なかったことを後悔させるに充分であった。ここまで見事な邦画には、そうそうお目にかかれない(個人的に、食べ物の描写だけがひっかかるが)。
映画館は楽しいところ。「さあ、お手並み拝見と参りましょうか」というようなスタンスなら、他の映画を探せばいい。(
→2009/09/23に追記あり)

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