2012/2/11  21:10

ナルル長編小説<7>  駄文

長編小説も7回目になりました。

まだまだヌリアさん成人しません…が、

なんとなく距離は近づいた気もします。

今回も、ひとりの移住者の右往左往生活を見守っていただければ幸いです…w



…みなさんはこんなことありませんでしたか?
私はこんなことばかりでしたw















<7>

あの金髪の移住者が気になり始めたのはいつのことからか。
とにかく不可思議な事が多い男だと、彼女は思っていた。
あれは、16日のこと。
彼女が学校の宿題の石を採りに、真実の扉前に行った時だった。
教会のほうから、首を横にひねり、手で首元を抑えながら、
あの金髪の移住者がやってきた。
「こんにちは」
「あ、こんにちは!」
とりあえず挨拶をしてみたものの、彼は浮かない顔をしていた。
彼女は、彼が何をしているのか気になって
「何してるの?」
と聞いてみたが、彼は少し難しい顔をして
「…うーん……何しようかと思っていたところだよ」
と言った後、
「あの、ヌリアちゃん…」
「…なに?」
「いや、ううん。なんでもない。ごめんね」
思い切って話を切り出してみたものの、
やっぱり大丈夫と言わんばかりに立ち去って行った。
ヌリアは考えた。
教会側から出てきたということは、どういうことだろうか。と。
教会に行く理由としたら、葬儀か婚約の時ぐらいだろう。
家系図を見に行くこともあるが、移住者には必要ないものだろう。
では婚約か?といえばそれはないだろう。
あの移住者に恋人がいるという噂は入っていない。
子供たちは色々見ているから、移住者が恋人出来たとなれば、
恋愛話好きな女の子たちから情報が入ってこないわけがない。
じゃあ、あの移住者は教会に何をしに来たんだろうか。
色々考えてみたが、結局分からず
『面白い移住者』ということで結論付けた。
移住者には移住者の考えがあるのだろう。


そんなことがあってから、4日後のエナの日のこと。
今度はバスの砂浜に走りに行った時、あの金髪の移住者を見つけた。
彼は、ぼーっと海を見て立ちすくんでいたが、彼女の存在に気付くと、
「こんにちは」
とちょっと照れたように笑った。
「何してるの?」
気になって近づくと、彼は悩んだような顔をした後、
ゆっくりと口を開いた。
「…ウミカイって、この国には来ない?」
「…はぁ?」
思わず口に出てしまった言葉に、彼女は軽く口元を押さえた。
「ウミカイって、あの海カイよね?卵を産む…」
「そうそう、それ!この国にも来るのかな?」
彼女は、彼の言いたいことを考えた。
考え付いた結果思いつく結果は一つ。
「…卵を採りにきたの?」
「実はそうなんだ。…その、オムレツでも食べられないかなーと…」
彼の言葉に、彼女は納得した。
彼の不可思議な行動も、一応は意味があるのだ。
まだ立ち上がった子供と一緒で、知らないことが多いのだ。
でも子供と違うのは、知らないながらも
違う知識を持っていることなのかも知れない。
(まあ、あたしもまだ子供なんだけどね)
と思いつつも、面倒を見てやることにした。
「卵は確かに、20日に産みに来るけど、ここじゃないわ。ルビの浜よ」
「え!!」
彼の驚いた顔に、思わず笑みがこぼれた。
予想通りの反応だったからだ。
「そうか…故郷ではバスの浜で採れたから、ここかと思ってた。
確かに浜多いんだよね、この国…」
「だから、ここに立っていてもいつまでも海カイは来ないわよ。
卵が欲しければ、シーラル島に行くことね」
「ありがとう!よかった。ずっとここで待ちぼうけするところだったよ」
「あぁそう。それはよかったわ」
「…シーラル島?…ルビの浜??かぁ」
彼の喜んだ顔に、一瞬顔がほころびかけたが、
つぶやいた一言で顔が凍結した。
「…ねえ、ヌリアちゃん」
「じ、自分で探しなさいよっ!」
迂闊だった。と彼女は思った。
まさか『シーラル島』の段階で疑問形になると思わなかった。
彼女の言葉に、ビフォードは照れたように長い髪をくしゃくしゃと掻いた。
「そうだよねぇ、教えてくれてありがとう。ちょっと行ってみるよ」
「そうね、探してみて。あぁ、ここを出てロークス港の方に行って
シーラル島の方に行く船に乗るのよ。
間違ってアラクトの方とかランスルの方に行っちゃだめよ」
「…アラクト?ランスル??えぇ、分かりました。ありがとう」
にっこりと笑うビフォードに対し、ヌリアは頭を抱えた。
分かっていない。アラクトもランスルも。
まだこの国の地名も覚えてないことに気づいて、
胸の中がイライラするのを感じた。
「それじゃあ行ってみるね」
「…あぁ、もう!」
ヌリアは苛立たしさを隠さずに頭を振った。
「あの、ヌリアちゃん、なんだかごめんね?僕、変なこと…」
「もういいわ!連れて行ってあげるから、ついてきて!」
「え?」
「ちゃんと着けたか気になるから、ついてきなさい!いいわね!!」
「あ、はい!ありがとう!」
ヌリアは振り返らずに歩きだした。横を歩く気はしない。
子供と一緒だ。ついてくるだろう。彼女はそう思った。
この男は、まだ1歳の弟と一緒だ。大人の皮を被った子供なんだ。
そういう扱いをしないと駄目なんだ。そう思うことにした。
ロークス港でついてきているか振り返ると、
つかず離れずついてきていた。内心、少しほっとした。
「こっちよ」
「あ、はい!」
彼が船に乗り込んだのを確認してから、船を出した。
船に乗りながら、ビフォードは周りをきょろきょろと見渡していた。
本当に子供だなぁと彼女は思った。
「なに?珍しいの?」
「はい!」
思わず声をかけてみると、彼は照れたように笑った。
「船に乗ったのは、移住してきた日以来かな。
そういえば、この船に乗った気もするけど、
緊張していたのかどういう道を辿ったのかあまり覚えてなくて…」
「それにしたって、分からなすぎだと思うわ…」
思わず目を細くしたが、彼は身を乗り出して目をらんらんと輝かせた。
「いやでも、最近は国の東半分だったら迷わなくなったよ!」
「それは偉くないわ!それにまだ半分?!」
ヌリアは愕然とした。彼女の表情を見て、ビフォードは肩を落とした。
「ほぼ、仕事に夢中になってて…いやあの…善処します」
「まあ、そうね…善処していけばいいと思うわ…さすがに困るわよ?」
強く言う必要もないと思い、それ以上言うのは止めたが、
心の中に引っ掛かっていたい疑問の回答が見えた気がした。
「そういえば、この間、真実の扉前で会ったわよね?」
「真実の扉…?あぁ、あの大きな扉かな?あ、そうだね、会いました」
真実の扉という名前は知らなくても、思い当たるところは合ったようだ。
それすら分からないと言われなくてよかった。と彼女は思った。
「教会に行ってたんでしょ?何しに行ってたの?」
「あ…。えっと。結婚式を見ようかなぁと」
「………はぁ??」
彼の答えが、彼女には突拍子もない回答で、またしても声が上ずった。
人を馬鹿にしたような答え方をしてはいけないと思っていながらも、
思わず内心の声が出てしまう。
「あの日、結婚式がある。ってお知らせがあって…
結婚式、キャンセルになることもあるのかな?
…誰も来ていなかったから、他の人たちはキャンセルを知っていた
って事だよね…」
ヌリアは思わず自分の口が開いていることに気付いた。
でもなんとなく分かった。
「…つまりあなたは、結婚式を見たかったのね」
「はい」
確かにあの日、一組結婚式が入っていた。
「知り合いの結婚式だっただけに、楽しみにしてたんだけど…」
「結婚式が教会であると思ったのね?」
「……もしかして、教会じゃ結婚式しない?」
恐る恐る尋ねる彼に、ヌリアは大きく頷いた。
彼は船の中で大きく項垂れた。
「…おかしいと…思ってたんですよねーそうか…そうか…」
とりあえず、間違いを知ってしまったからには無視は出来ないだろう。
とメンドクサイと思いながらも、教えてあげることにした。
「…結婚式は、アトリウムでするのよ」
「アトリウム?」
「…新年挨拶を王がするところよ」
「………」
駄目だこの人。と彼女も頭を項垂れた。
こんなに手のかかる人は初めてだ。
「あの、ごめんね…その…来年は新年のご挨拶に行きますから!」
「…あぁ、そうか。…そうね、そうだったわ」
彼の言葉で、ふと自分の過ちに気付いた。
「あなた、移住してきたのは3日だったわよね。それじゃあ分からないわね」
「よく僕が3日に移住してきたって知ってるね」
「…情報は入ってくるもの。珍しい年だったから尚更ね。
3日と4日に立て続けに移住者が来るなんて」
「さすが王族ですねー。国民をちゃんと把握してるんだね」
関心して頷くビフォードを、軽く無視した。
王族としての義務というよりは、子供たちの噂の方が強い。
…なんてことはこの男に言う必要はないと思った。
それに、あながち間違ってもいない。
自分が王族であることは間違ってはいないし、
情報は常に気にかけるようにしているのも事実だ。
ただ、褒めて貰うことではないとは思っている。
そんなことを考えていると、丁度シーラル港に着いた。
ビフォードはサッと一人先に降りる。
自分も降りようと腰を浮かすと、目の前に手が出された。
見上げると、ビフォードがにこやかな顔で彼女に手を差し出していた。
「…別に大丈夫よ」
何故かむすっとして手を取らずに船から降りようとしたが
「案内してもらっているお礼は、これくらいしか出来ませんしね」
という言葉に、
「確かにそうね」
と手を取った。確かにそれくらい、してもらってもいいわよね。
と思った。ヌリアが船から降りると、彼は手を離した。
「じゃあこっちよ」
(案外、暖かい手をしてるのね)
そんなことを考えながら、シーラル港を出て、左に曲がった。
振り返ると、ビフォードは彼の方を向いておらず、
果実を取っている人に目を奪われているようだった。
そのため、少し距離が開いてしまっていた。
立ち止まって待っていると、駆け足で彼女に寄ってきた。
「迷子になるわよ」
この距離で迷子もないわよね。
と思いながらも、思わず皮肉を込めて言うと
「そうだね。ごめんね」
彼は彼女の皮肉にも気付いていないのか、素直に謝った。
「ヌリアちゃん、あの果実って食べられるの?!」
「……」
今日は自分らしくない。脱力してばかりだ。
「食べてみたら?」
「そうか、そうだね」
めんどくさくなって少し投げやりにそう言うと、
ビフォードはなっている実を一つ取った。
手に取ったのはノミカの実だった。
その実を齧ると、ビフォードは目を見開いた。
「おいしいよ!!」
「…そう、それはよかったわね」
「君もどう?おいしいよ」
彼は、手に持てるだけ果実を取ると、ヌリアに一つ差し出した。
ヌリアは、彼の止める間もない行動に、ガクッと肩を落とした。
そして首を左右に振った。
「…結構よ…それにあなた…
そんなに手に持ってどうするつもり?
海カイの卵、持てないんじゃない??」
「…あ…」
彼女の言葉に、ビフォードは言葉を失った。
「……食べます。食べれます、これくらい。うん。
今日の朝ごはんも抜いてるし…
こんなおいしい果実だったら毎日でも!」
ビフォードはそう言うと、2つ目3つ目をおいしそうに食べ始めた。
その様子を、ヌリアは寧ろ憐れみの目で見た。
「ご飯抜くって…あなた、どんな生活してるのよ…」
「あはは、お恥ずかしいながら貧乏生活しているもので」
彼は恥ずかしそうに笑うと、4つ目を食べきった。
食べるのが早くて、ヌリアは唖然とした。
この男は、今まで見てきた人たちと違う。
不快ではないが、驚きばかりだ。やることやることに目が離せない。
「お待たせしました。道案内、お願いします」
「あ、あぁそうね。こっちよ」
彼に振り回されてる気もしたが、案内を続けることにした。
とはいえ、もう目的地は目と鼻の先だ。
果実棚を抜けて左に曲がると、もうそこはルビの浜。
浜に入ると、たくさんの卵がすでに産まれていた。
「うわぁ、すごいなぁ!国と一緒だ!なんだか嬉しいなぁ」
彼は、駆けだすと卵を拾い始めた。それはそうだ。
と彼女は思った。もう時間的にはを夕刻に近くなっている。
今頃は、エナの子の発表をしてるところだろう。
「ねえ」
「?なに?」
卵を取って戻ってきたビフォードに、ヌリアは話しかけた。
「卵取りに夢中になっててよかったの?
エナの日に行けばよかったのに」
「あー…」
彼女の問いに、彼は困ったような顔をした。
「確かに、見に行くくらいはよかったかな…。
卵が食べたくて、つい忘れてたけど…
ほら、久々のたんぱく源だったし…こっちに夢中になってしまって」
ぽかんとしてしているヌリアに気付かず、彼は続けた。
「ほら、僕も選ばれてないし…」
「…行ってもないのに、何故選ばれてないって分かるのよ」
「え、だって選ばれてるという通達書もなかったし……もしかして?」
ヌリアの顔色に気付き、彼が恐る恐る尋ねると、ヌリアは大きく頷いた。
「そんなものないわよ…
現地に行ってみないと分からないことよ?」
「そ、そうだったんだ…いやでも!
僕が選ばれるわけないし、だったら食材確保したほうが!」
確かに、エナの子になってるこの男の姿は想像できない。
しかし、もしかしたらの可能性はあったのだ。
掲示板に人気者の欄に、彼の名前が乗っていたことを知っていたからだ。
でも何となく、それを言うのも躊躇われたので口にはしなかった。
その理由は自分でも分からないが、何となくそんな気がしたのだ。
「えと、とにかくありがとう。
これでしばらく、食べ物には苦労しなそうだ!」
彼の満面の笑みに、どこから突っ込んでいいのか分からなくなった。
この男の生活に興味は持ったが、
あまり深くかかわるとロクなことにならない気がして、
これ以上突っ込まないことにした。
「まあ、それならよかったわ。それじゃあ私はこれで」
「本当にありがとう」
彼の感謝の言葉に押されるようにして、ルビの浜を出た。
自分も果物を採って、自宅に向かって歩き出した。
歩きながら、あの男の事を考える自分に気付き、苦笑した。
本当に『面白い男』だと彼女は思った。




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