『百万円と苦虫女』
2008年日本映画 121分
脚本・監督:タナダユキ
撮影:安田圭 美術:古積弘二 編集:宮島竜治、菊井貴繁
音楽:櫻井映子、平野航 主題歌:原田郁子「やわらかくて きもちいい風」
出演:蒼井優(佐藤鈴子)、【実家にて】齋藤隆成(佐藤拓也)、キムラ緑子(母)、矢島健一(父)、平岩紙(リコ)、弓削智久(浜田武)、江口のりこ(拓也の担任・浅野弥生)、嶋田久作(看守)、モロ師岡(刑事)、鈴木達也(真吾)、松田一沙(鈴子の同級生)、ささの堅太(翼)、米本来輝(翔)、【海辺にて】竹財輝之助(ユウキ)、斎藤歩(海の家の主人・黒澤祐三)、安藤玉恵(妻・広美)、宇都秀星(息子・祐作)、【山あいの町】ピエール瀧(藤井春夫)、佐々木すみ江(藤井絹)、笹野高史(白石)、石田太郎(上田村長)、【地方都市】森山未來(中島亮平)、堀部圭亮(小暮主任)、悠城早矢(宮本朋世)、松嶋亮太、山中崇、中村靖日
佐藤鈴子は、短大を卒業後、就職浪人をしながらファミレスでアルバイトをしている21歳。バイト仲間のリコからルームシェアを持ちかけられて部屋を見つけるが、リコと別れた浜田武と同居する破目になる。雨の日、捨て猫を拾ってきた鈴子だったが、買い物に行っている間に猫を捨てられ、仕返しに武の荷物をすべて捨ててしまう。荷物の中に百万が入っていたバッグがあったと主張する武から刑事告訴され、拘置所に入れられる。出所して実家に戻った鈴子は、中学受験を控える優秀な弟・拓也からは受験に響くと非難され、百万円貯まったら家を出て行くと宣言。新聞配達、ビルの清掃、苦情受付係を掛け持ちしてお金を貯める。そんなある日、買い物帰りに昔の同級生から「前科者」とからかわれた鈴子は豆腐やネギを投げつけて反撃する。小学校でいじめられている拓也はそんな姉の姿を見て、家を出たら手紙をくれるように言う。やがて百万円を貯めた鈴子は実家を出る。海の家で働きはじめ、かき氷を作る才能があると褒められる鈴子。サーファーのユウキは鈴子に声をかけて海辺のパーティに誘うが、鈴子は心を開こうとしない。次に向かったのは山あいの町。喫茶店ホワイトの主人・白石の紹介で藤井絹と息子の春夫が営む桃畑で働き始める。絹から「桃をもぐために生まれてきたんでねえの」とまたしても褒められる鈴子。村の中でも評判となり、村長からは村おこしのために「桃娘」になってもらいたいと頼まれてしまう。春夫に言われて白石に断りを入れる鈴子だったが、公民館で村人を集めての全体集会を開く事態に。「田舎を馬鹿にしている」と非難された鈴子は「私は前科者なんです」と叫んで公民館を飛び出す。次に向かったのは東京から特急で1時間ほどの距離にある地方都市。アパートの近くのホームセンターでアルバイトを始めた鈴子は、そこで同じ年の大学生・中島亮平に出会う。ミスをして主任から叱られた鈴子に優しく声をかける亮平。自分と同じように人付き合いが苦手な亮平に惹かれていき、やがて付き合うことに。ところが亮平は新しくバイト入ってきた大学の後輩・朋世と親しくなり、金を貸して欲しいとまで言い出す。亮平の気持を疑い始めて別れを切り出した夜、拓也から手紙が届く。
蒼井優さん3年ぶりの主演作。
ヒロイン・鈴子は100万円貯まったら次の場所へ行くと決めて海から山、地方都市へと旅を続ける。鈴子はそれが自分探しの旅ではないと言うが、結果的にはかき氷を作る才能や桃もぎの才能など新たな一面を発見していく。
しかし、いつも困ったような笑顔を浮かべ、前科者という負い目もあってかとにかく自分に自信が持てない彼女は、そんな才能は役に立たないと言い、好意を持たれても人と深く関わることを避け、亮平と恋仲になっても彼が自分と付き合っているのはお金を持っているからだと疑う。
鈴子に決定的に欠けていたのは自分を愛するという才能だろう。
実際には彼女のことをちゃんと見ている人たちがたくさんいる。
弟の拓也はそのうちの一人。
中学受験を控えていた拓也は家族から前科者が出ては受験に響くと姉を厄介者扱いしていたが(夕食のシーンで姉弟間と夫婦間との言い合いがクロスするあたりは見事)、昔の同級生に反撃する姉の姿を見て、家を出たら手紙を書いてくれと言い出す。2人が手を握るところが微笑ましい。
その後、拓也は小学校でいじめられ続けていたが、自分の机の上に置かれていた花瓶が置かれているのを見て、それを床に叩きつけ、いじめっ子連中につかみかかる。そして逃げたりしないでみんなと同じ中学に行くと決意する。
そんな弟からの手紙を読んで鈴子が涙するシーンがいい。
最後に亮平がお金を借りていた理由が明らかになり、彼は町を去ろうとしていた鈴子を追いかけて駅に向かう。
カメラはまるで二人が見つめあったかのように映すが、実際はお互いの存在に気づかないまま、鈴子は「来るわけないか」とつぶやいて改札口に向かう。
結局、亮平との恋はすれ違ったまま終わってしまったかも知れないが、きっと鈴子はこの先、もう少し自分をうまく表現してもう少し人とうまく接することができるようになっているだろう。
エンディングの曲名通り、やわらかくてきもちいいラストだった。
役者陣に関しては脇役にいたるまで文句なし。
このヒロインはほとんど蒼井優さんに当て書きしてるんだろうな。
拘置所からシャバに出たときに「シャバダバシャバダバ〜」などと『11PM』のテーマソングを口ずさんでいたけど、さすがに21歳じゃ知らないだろ(笑)。
それと蒼井優さん、ちょっと細すぎでは。
伸びをしたり大の字に寝そべったりすると尚更細さが際立っていた。
★★★1/2