『1978年、冬』
西干道/The Western Trunk Line
2007年中国・日本映画 101分
脚本・監督:李継賢(リー・チーシアン) 脚本:李薇(リー・ウェイ)
撮影:王昱(ワン・ユー) 美術:全榮哲(チュエン・ロンシャー)
出演:李傑[リー・チエ](李四平/リー・スーピン)、張登峰[チャン・トンファン](李方頭/リー・ファントウ)、沈佳妮[シェン・チアニー](雪雁/シュエン)、趙海燕[チャオ・ハイイエン](母)、楊新平[ヤン・シンピン](父)
1978年、冬。中国北部の小さな町、西幹道。通勤と通学の人々を運ぶ通勤列車が、凍てつく空の下をいつものように人々を乗せて走っている。工場に通う人々、学校へ行く子供たち、その土地の人が何かをする時に必ず利用するのがこの名前のない通勤列車である。四角い坊主頭が特徴的で、俯きがちな視線が印象的な男の子ファントウは11歳。近くの西幹道小学校へ通う彼は、内気で人見知りしがちな性格のため、クラスの友達からよくいじめられている。絵を描くのが好きで、授業中も下校後も、時には原っぱのドラム缶を机に、紙がなければ壁を画用紙に、思い浮かぶまま絵を描いている。しかし決して家で描かないのは、父が絵を描くことに反対しているからだ。彼の父は軍医で無口そのもの、何か問題が起こっても深い眼差しで子供たちを見守っている。反対に母は細かく躾をし、彼女なりの方法で子供を厳しく管理していた。18歳の兄スーピンは近くの工場に勤めている。仕事をさぼっては廃墟となった背の高いビルにある秘密の場所に隠れ、遠い海外のラジオから流れる知らない言葉で奏でられる音楽を聴いていた。自分が住む小さな世界を出て遠い世界に憧れる彼は、皆とは違う世界を持っていた。時にそれは勝手気ままに生きているような印象を周囲に与え、母の怒りを買った。ついに兄が工場をさぼっている事が両親に知れ、厳格な母は、弟に兄が工場の門を潜るのを見届けてから学校に行くよう命じた。毎朝兄弟二人は、通勤列車に並んで揺られ、時に線路上を微妙な距離を取り、歩いて行く。ある日、家族で見に行った「新年迎戦友文芸演出」という公演で、少女シュエンの踊る姿を見て、兄弟は密かな憧れを抱いた。シュエンは北京から来た少女で、兄弟の目の前の家に住んでいる。スーピンは何とか彼女との距離を縮めたいと思った。彼女の後を付け、彼女が出した手紙をポストから抜き出す。中には離れて暮らす父親への手紙と仕送りが入っていた。最初手紙に気づかず、そのお金を使って皿一杯の餃子をナイフとフォークを使って食べる。しかし陽に透かした封筒の中に彼女の手紙を見つけ、病の床にある父親宛の送金だったことに気づくと、お金を稼いでその手紙を代筆し再び出そうと考えた。彼は換金出来そうな金属を集めては売りに歩いた。シュエンはスーピンが自分の手紙を悪意から盗み読みしたと思い、絡まれた時に助けられた事で一時近づけた距離を、再び遠ざける。シュエンに誤解されたスーピンは、彼女の工場を訪れる。そこで先日銅を盗んで逃げた事がばれ、シュエンと二人、事務所で詰問されることに。スーピンの懐からは、書き直した手紙とお金が出てきた。理由を問い詰められ「彼女に踊ってほしかったから」と答える。解放された二人は一緒に通勤列車に乗り、スーピンの秘密の場所で時間を過ごす。一方ファントウは、下校途中でひとり絵を描いている時に通りがかったシュエンに「展覧会が開ける」と言われ舞い上がっていた。ノートに鉛筆で書いた絵を荒野の柱に貼り、個展の真似をして楽しんでいた。シュエンから特別に画用紙を貰うと、誰にも言わずにベットに隠した。それに気づいたスーピンは、夜中に弟の布団に故意に水を溢す。翌朝、ファントウの布団は家の前に干され、おねしょをした事がシュエンに分かってしまい、恥ずかしい思いをする。スーピンは文芸団員になったと父親へ偽りの手紙を書いたシュエンの為、踊っている彼女の写真を撮り、送る事を思いつく。友達の家からミシンを持ち出し、あらゆる場所から美しい布を切り、雑誌で見た美しい衣装を手作りした。こっそり講堂の舞台に忍び込むと、そこでシュエンの写真を撮る。父親の病気が悪化し、突然シュエンが姿を消した。ひとり秘密の場所でスーピンは彼女の帰りを待った。少し経って、いつの間にかひっそりとシュエンは再び戻ってきた。無言の彼女を付けていくスーピン。秘密の場所に着くと、シュエンがスーピンに父が亡くなった事を打ち明け始めた。兄の後を付けて来たファントウは、そんな二人の姿を見て、廃墟から飛び出して行く。工場を解雇された兄の監視をきちんとしていなかったと母に怒られたファントウは、絶えられずに自らレンガを頭にぶつけた。小さな町では噂はすぐに広まる。二人だけで会っていたスーピンとシュエンが町の人に見つけられ、更に皆の噂の的になった。ファントウは課外学習の時間に不良の弟とからかわれ、服を剥ぎ取られ、逃げ場がなくなり裸で崖の下へ飛び込んだ。夜、スーピンは向かいの窓に懐中電灯で何度も合図をするが、シュエンは顔を出さない。結局、スーピンは自分の素行のせいでいじめられる弟を見かねて、家を出て軍隊に入隊することを決意する。入隊の日。列車が駅を出る瞬間、あんなに厳しかった母が泣きながらスーピンに声を掛ける。ファントウは言葉もなくただ兄の顔を見ていた。スーピンは走り出した列車の中から、建物の陰にいるシュエンの姿を見つけた。走り出して列車に向かってすがるように追いかけてくるシュエンの姿に、スーピンは手を振る。灰色の空に白い蒸気を吹き上げ、汽笛を鳴らしながらスーピンを載せた列車は、町を離れて行く…。【「CINEMA TOPICS ONLINE」より引用】
2007年東京国際映画祭コンペティション部門審査員特別賞受賞作。
原題の「西干(幹)道」は映画の舞台となる小さな町の名前。
文化大革命後の1978年という時代とこの町自体が言わば主人公。
町には線路が通っていて、スーピンとトンファンの兄弟が汽車に乗って工場や学校に行ったり、線路上を歩いたりするシーンが幾度となく出てくる。
線路はどこまでも続くかのように見えて、この町には閉塞感がつきまとう。
冬の寒々しい景色が更にその思いを強くさせる。
工場での仕事をサボってラジオを修理し、海外の放送を聴いているスーピンはいつかこの町を出ることを夢見ているわけだが、都会から来たシュエンに心を奪われるのも無理からぬこと。
ストーカーまがいのことをやりつつもやっと2人の距離が近づいたかと思いきや、父親が病気になってシュエンは北京に戻ってしまうのだが、それを字幕だけで説明してしまったのにはびっくり。
更にいつの間にか戻ってきたシュエンが再会したスーピンの前で服を脱ぎ出すにいたっては理解不能(笑)。
全体的な雰囲気は悪くはないのだが、いじめられて服を脱がされたファントウが崖から飛び降りるところや(あんな高さで大怪我していないのが不思議)、溝が出来てしまったファントウとスーピンとの関係など、あと一歩踏み込んで欲しいところでサラっと流れてしまったのが残念。
兄弟に扮したのはどちらも演技経験のない素人だとか。
弟くんの方はかつて『さんまのスーパーからくりTV』に出ていた我妻泰照(たいき)くんに似ている(笑)。あまり台詞はなかったが、兄のことを不良呼ばわりされて同級生をニラみつけるときの表情なんかはなかなか堂に入ったもの。
シュエン役のシェン・チアニーさんはテレビドラマに出演経験はあるとのことだが、スラっとしていていかにも中国人的な8頭身美人。今後の活躍に期待。
★★1/2