『地上5センチの恋心』
Odette Toulemonde
2006年フランス・ベルギー映画 100分
脚本・監督:エリック=エマニュエル・シュミット
製作:ガスパール・ドゥ・シャヴァニャック
撮影:カルロ・ヴァリーニ 音楽:ニコラ・ピオヴァーニ
出演:カトリーヌ・フロ(オデット・トゥールモンド)、アルベール・デュポンテル(バルタザール・バルザン)、ファブリス・ミュルジア(ルディ)、ニナ・ドレック(スー・エレン)、カミーユ・ジャピ(書籍売り場ナディーン)、ジャック・ウェベール(オラフ・ピムズ)、アラン・ドゥテー(編集者)、ジュリアン・フリゾン(バルタザールの息子フランソワ)、ロランス・ダムリオ(イザベル・バルザン)、アイサトゥ・ディオプ(プレス担当フロレンス)、フィリップ・グデール(ダルジャン部長)、ニコラ・ビュイッス(スー・エレンの恋人ポロ)、ブルーノ・メスジェール(イエス)、ジャクリーヌ・ビール(バスの女性)、エリック・ビュルク(向かいの住人フィリップ)、サンドリーヌ・ラロシュ(シルヴィー)、ジョフリー・ルブー(アレクサンドル)、シンディ・ベッソン(殴られた女性客)
ベルギーに住むオデットは明るくて少し夢見がちな主婦。10年前に亡くなった夫に代わり、昼はデパートの化粧品売り場で働き、夜は踊り子の羽根飾りの内職をしながら美容師の息子ルディと生意気盛りの娘スー・エレンと暮らしていた。そんな彼女の日課は、寝る前に大好きな作家バルタザール・バルザンの小説を読むこと。一時は自殺を考えたこともあったオデットだったが、バルタザールの小説を読むとたちまち夢の世界に誘われるのだった。ある日、ブリュッセルでバルタザールのサイン会が行われ、オデットは半日休みをもらって書店に駆けつける。ところが、緊張のあまり自分の名前をデット(借金)と言ってしまう。落ち込むオデットにルディがファンレターを書くことを提案。ルディの恋人アレクサンドルから再びサイン会があることを知ったオデットは、自分の思いを書き綴ってバルタザールに手渡すことに成功する。一方のバルタザールは女性関係にだらしなく、妻イザベルとの関係も冷え切っていた。自分の小説が型にはまったロマンス小説に過ぎないと思っていたバルタザールは、最新刊がテレビで酷評されているのを目にして落ち込む。しかも、妻がその評論家ピムスと浮気している現場を目撃し、思い余って自殺を試みる。病院に運ばれ、何とか一命を取り留めたバルタザールは、ふとオデットから貰ったファンレターを読み始める。そこには彼への尊敬と感謝の言葉が並んでいた。すっかり感激したバルタザールは、「誰かに愛されたい」とオデットの元を訪れる。「少しの間、ここに置いてくれないか?」と言うバルタザール。思わぬ訪問者に呆然としつつも、申し出を快諾するオデット。こうしてオデットにとって夢にまで見た憧れの人との生活が始まる。
『イブラヒムおじさんとコーランの花たち』の脚本を手がけたエリック=エマニュエル・シュミットさんの初監督作品。
ヒロインの苗字トゥールモンドは"Tout le monde"(みんな)のもじり。
つまりは彼女はどこにでもいるありふれた人。
黒人歌手ジョセフィン・ベイカーのシャンソンを好み、歌って踊るシーンがいくつかあるが、見事なまでに垢抜けてない(笑)。
ヒロインが文字通り宙に浮いたり化粧品が踊り出したりするシーンも楽しく、登場人物もそれぞれクセ者揃いだが、くっついたり離れたりが続く後半が少々回りくどい。
バルタザールが一度フランスに戻る理由もよく分からない。
どうも後半は作家としてのバルタザールがどこかに行ってしまったような印象が残る。
結局のところ、オデットとくっつくことがバルタザールにとっていいことなんだろうか。
彼にとってオデットは最良の読者かも知れないが、そこに逃げ込んでいては作家として駄目だと思うんだけど。それに彼が作品を書けなくなれば、オデットも幸せ気分で宙を浮くこともできなくなるわけだし。
ただ一つ気になるのは度々オデットの前に現れる「イエス」の存在。
若者たちの足を洗ったり、水の上を歩いたり、ゴルゴタの丘に登るイエスのように木材を背負っていたり。
ひょっとしたら彼こそはオデットを地上に留めておいた張本人かも知れない。
★★1/2