『フローズン・タイム』
CASHBACK
2006年イギリス映画 102分
脚本・監督・製作:ショーン・エリス 製作:レネ・バウゼガー
撮影:アンガス・ハドソン 音楽:ガイ・ファーレイ
出演:ショーン・ビガースタッフ(ベン・ウィリス)、エミリア・フォックス(シャロン・ピンティ)、ショーン・エヴァンズ(ショーン・ヒギンズ)、ミシェル・ライアン(スージー)、スチュアート・グッドウィン(ジェンキンズ店長)、マイケル・ディクソン(バリー・ブリックマン)、マイケル・ラムボーン(マット・スティーヴンズ)、マーク・ピッカリング(ブライアン・“カンフー”)、フランク・ヘスケス(少年時代のベン・ウィリス)、エリカ・エリス(学食の女性)、ケネス・フェイ(美術クラスのモデル)、スタン・エリス(美術クラスの先生)、ケイティ・ベル(美術クラスの女生徒)、ヘイリー・マリー・コッピン(スウェーデン人留学生)、レネ・バウゼガー(カートを押す女性)、イレーネ・バガチ(静止した美女)、ゲイリー・ビーソン(少年時代のショーン)、カタリーナ・オルソン(ショーンの母)、ゲイル・ダドリー(ナタリーの母)、ネリー・リスター=スミス(少女時代のナタリー)、ヘンリエッタ・ベス(ベンの母)、サマンサ・ブルーム(ブース先生)、エミリア・フェントン(ターニャ・グリーン)、ニック・ハンコック(ローリー・デイヴィス)、マシュー・ホジソン(“スプレッド・イーグル”のバーテン)、ビアンカ・ドレイクス(“スプレッド・イーグル”のストリッパー)、ジャニーン・メイ・ティンズリー(大人のナタリー)、ジャレッド・ハリス[クレジットなし](アレックス・プラウド)、ルーシー・ホルト(プラウド画廊のルーシー)、ダフネ・ギネス(アンナ・シャピオ)
美大に通う画家志望のベンは、2年半付き合ったスージーに別れを切り出す。自ら別れを告げながら未練が残るベンは、学食でスージーがスティーヴと一緒にいるところを見て気になって仕方がない。幼なじみのショーンは「モデルと付き合えばスージーが対抗心を燃やして戻ってくる」と気楽なことばかり。学生寮に住むベンはある夜、「やり直したい」とスージーに電話をかけるが、スティーヴと寝たと聞かされて眠れなくなる。1日の時間が8時間増えたベンは、思い出の写真を燃やそうしたり、昔読めなかった本を読んだりしたが、スージーへの思いを断ち切ることはできなかった。そんなある夜、スーパーマーケットで見つけた“明るい夜間スタッフ募集中”の文字。ベンは余った時間を活用するため、バイトをすることに。ここで働く仲間たちはそれぞれの8時間を過ごしている。レジ係のシャロンは“時計は敵と思え”というルールの下、腕時計や掛時計も視界に入らないようにする。悪友コンビ、バリーとマットは仕事をサボって悪ふざけばかり。店長からは大人のおもちゃの形をしたシャンプー販売を命じられる。眠れなくなってから2週間。想像と現実、現在と過去の間に揺れるベン。そして遂には時間が静止する。少年時代、スウェーデン人留学生のヌードを見てから女性の体の美しさに魅せられていたベンは、静止した世界で思う存分、美しい女性たちのヌードをデッサンする。次第にスーザンのことを忘れ始めたベンにショーンは“ナタリー”をしようと持ちかける。ナタリーとは行きずりのセックスのことで、その昔、50ペンスでアソコを見せてくれた近所で有名な女の子の名前から来ていた。スーパーには更にカンフーマニアの新入りブライアンがやってくる。棚卸をしながらシャロンがマットの誘いを受けたと知ったベンはショックを受ける。ロサンゼルス五輪に出場したランナー、ゾーラ・バッド、担任のブース先生、そしてターニャ・グリーン。過去に夢中になった女性たちを思い出すベン。2日後、マットが得意気にシャロンとのデートを話していると、店長が日曜の夜にフットサルの試合に出場するように命令する。イズリントン店の店長ローリーにライバル心を燃やしながらも、26対0という一方的な試合展開。店長がボールを顔面に受けて運ばれ、ベンはシャロンを送っていくことに。初めてお互いのことを話し、お互いを意識し始めるベンとシャロン。眠れなくなってから4週間。シャロンとキスを交わしたベンは久しぶりに昼まで眠り続ける。更にベンの作品を見たというプラウド画廊のオーナーから個展を開きたいという電話が入る。それがバリーとマットのいたずらとは知らず、ベンは幸せ気分でシャロンとともにジェンキンズの誕生パーティに向かい、スージーと再会する。ジェンキンズ店長とスティーヴは兄弟だったのだ。ベンの気持はもうシャロンに向いていたが、スージーが「あなたを忘れられない」と言って突然のキス。それを偶然目撃してしまったシャロンは部屋から出て行く。時間を巻き戻したい、しかし過ぎてしまった時間は取り消せない。失意の中、画廊に自分の作品を見せに行くベン。電話をした覚えはないと言うオーナーだったが、ベンのスケッチに興味を示す。後日、シャロンは招待状を受け取り、雪の降る日の画廊を訪れる。そこでは「静止した瞬間」と題された個展が開かれていた。シャロンは自分の表情や仕草の一瞬を写し出したキャンバスが並んでいるのを見て驚く。
アカデミー短篇実写映画賞にノミネートされた作品を長篇映画化。
原題の"CASHBACK"(換金)は普通の人が眠っている時間に働いて金に換えるということ。日本語のキャッシュバックは和製英語らしいけど、逆輸入?(笑)
監督は写真家としても活躍するショーン・エリスさん。
監督とともに本作を製作したレネ・バウゼガーさんは、店内でカートを押す女性として出演。体張ってますなぁ。
時間を止めて女性のヌードを描くなんてのは男の願望以外の何物でもないが(昔、そんな漫画があったような)、アイディア倒れに終わることなく、一つの作品として昇華されている。
ベンは時間は止められても時間を戻すことはできない。
スージーとのキスをシャロンに見られて時間を止めたまま、どうしようかと悩んだまま2日間が経過。ベンにうっすら無精ひげが生えているところが芸が細かい。
登場人物たちはいずれもキャラクターが濃く、全篇にユーモアが溢れている。
“THE BOSS”と書かれたカップを愛用するジェンキンズ店長をはじめ、ハムを股間にあてがってフェラチオの真似をしたり、店内でスクーター競走をするバリー&マット(バリー役のマイケル・ディクソンさんは本木雅弘さん似)、そして幼馴染のショーン。
“平手打ち”と書かれた鉢巻をしていたブライアンはちょっと浮いてたかな。
主人公のベンを演じるショーン・ビガースタッフさんがどこにでもいそうな普通の兄ちゃんという感じだったのもよかった。
ベンの“ヰタ・セクスアリス”とも言うべき少年時代のエピソードの数々も秀逸。
ショーンの母親が買い物に行っている間にエロ本を見ようとしたら、財布を忘れた母親が帰って来てしまい、慌てて隠したはいいものの膨らんだ股間を見られてゲイだと思われていたとか、50ペンスを払えばスカートをめくり、パンツを下ろしてくれるナンシーの家の外に行列が出来ていたりとか(ちなみに大人になったナンシーはストリッパーになって店長の誕生パーティに登場)。
左腕を骨折してギプスをしていたターニャにサインを求められて“×”(キスを意味する記号)とだけ書くところも可愛らしいが、ギプスを外したらゴリラのように毛むくじゃらになっていたというのも面白い。
字幕が不十分で笑いにつながらなかったところもある。
冒頭でベンとショーンが会話をしているとき、スティーヴ・ジェンキンズとフルネームで話しているのに、字幕では1度“スティーヴ”と出ただけ。
そのせいで、バイトの面接のときにジェンキンズ店長のネームプレートがアップにされても面白さが伝わらない。
ま、2人が兄弟であることは後半で明らかにされるわけだけれども。
さすがに写真家だけあって映像も美しく、ラストの雪は実に見事。
★★★1/2